アイル

騎士に恋をした国王の365日の顛末-3

 宴の席で半ば無理矢理に決定した房中術の授業は、それから一週間後の週末から週に一回の頻度で二か月間行われることになった。
 普段は二人とも何かと忙しいために、なかなか時間を合わせることが出来ない。それならばと、仕方なく二人とも休みを取っている週末に授業の時間を取ることになったのである。
 しかしながら週末といえども、ダリューンの方は不定期で大規模な訓練が日中に入ることがある。そのため、授業の時間帯は昼ではなく夜となったのだ。
 もちろんアルスラーンは、週末の夜に授業を行うという話しを聞いたときに驚いたのは言うまでもないだろう。しかし考えるまでもなく自身が意識しすぎているだけというのは分かっていたので、表面上は平静を装いながら快諾したのだ。
 ところがその反動のせいか。
 記念すべき第一回目の授業では取り繕えないほどにガチガチに緊張してしまったのだ。加えて初回の内容がいきなり「女性との性行の仕方」という飛ばした内容であったために、最中は返事すらままならない有様であった。
 無論「房中術」というからにはアルスラーンもそれなりに覚悟していた。しかしそれを言っているのがダリューンとなると、とんでもない破壊力だったのである。
 しかし当のダリューンはといえば意外にも恥ずかしがる素振りは全くなく、彼の知らない側面を垣間見たような気がしたアルスラーンであった。

 とはいえダリューンがそのように冷静でいてくれたおかげか。あるいは毎回の授業の内容は、書庫の奥の方に偶然に焼かれずに残されていた資料を元にナルサスが考えているらしいと聞き、王族の者達が代々学んできた儀礼的なものであると認識したおかげか。
 比較的早い段階でアルスラーンもその内容に慣れることが出来た。
 おかげで一か月も経過するころには普段通りにその授業を聞いていたが……それが油断だったのかもしれない。
 その頃から授業の最中の空気が、健全なものから怪しいものへと、はっきりと変貌していった。

戻る