アイル

国王陛下の夜の手習い-1(R18)

「陛下、やはり……今日はこのくらいにしておきましょう」
「は、うっ?」
 満月が中天に差し掛かったころ。アルスラーンは自室の寝台の上で四つん這いの格好になっており、尻の孔にダリューンの太い陰茎を半ばまで挿入されていた。
 しかしその動きが唐突に止まってその身をゆっくりと引かれたのに、閉じていたまぶたをゆっくりと開きながらおずおずと背後に顔を向ける。
「ダリューン、その、私は大丈夫だから」
 だから気にせず先を続けてくれと言葉をかけるが、ダリューンは口元に小さく笑みを浮かべながらゆるゆると左右に首を振る。そしてこういう時の彼は、主君である自身がなんと言おうと絶対に聞き入れないのを思い出すと、アルスラーンは再び顔を前に向けて寝台の上に目線を落とした。

 アルスラーンとダリューンは、王都を奪還してしばらくしてから恋人同士の関係になり、かれこれ一年ほど付き合っている。そしてほんの数か月前から身体の関係を持つようになったが、アルスラーンはいまだにダリューンのソレを全て受け入れることが出来ないでいた。
 おかげで二人の行為はいつも中途半端な状態で終わりを迎え、持て余した熱は互いの陰茎を擦り合わせたり、腿にダリューンの陰茎を挟んでやって擬似的に繋がっているような状態になることで毎回発散をするというのが常である。
(だが……いつもこれでは)
 アルスラーンも受け身であるとはいえ男だ。こんな状態が数か月も続けば、ダリューンにとってはただの生殺し状態でしかないということは何となく想像が付く。それにここだけの話し、アルスラーン自身も全く進展の気配すら無いこの状況に少しばかり焦れていた。
 というのもここに至るまでの間に、アルスラーンはダリューンの指で尻の孔を散々ほぐされているのだ。
 彼は自身の主君のこととなると、とても慎重になるのは想像に難くないだろう。つまり尻の孔の中にある男の泣き所、前立腺と呼ばれる箇所をこれでもかと言わんばかりに弄られまくるせいで、いざ挿入という段階に至る時には自身の陰茎からはだらしなく先走りが垂れ、尻の孔は物欲しげにヒクついているという有様になってしまっているのである。
 しかしいざダリューンの陰茎を押し付けられて指の届かない箇所、前立腺よりも奥まで挿入されると、その圧迫感からついうっかりと身体を強張らせてしまって。そしてそれをダリューンが気付かぬはずもなく、結局のところいつも亀頭の先端で前立腺を申し訳程度に撫でられるだけで行為は終わってしまうのだ。
 そして数か月にわたってそんな調子であり、今日もまたそうだ。
 ダリューンはアルスラーンが息を詰まらせたのを敏感に察すると、なるべく負担をかけないようにとゆっくりと陰茎を引いていってしまう。すると窄まっている入口付近の内壁をカリ首に引っかけるように擦り上げられ、ゾクゾクとした熱が腰全体に広がるのにアルスラーンは耐え切れずに寝台の上に両肘を付いた。
「う、ううっ、」
 恥ずかしいのであまりまじまじと見たことは無いのだが、ダリューンのソレはアルスラーンの物とはまるで違う。見た目だって完全に大人の物だし、大きさだって自分の物とは比べ物にならない。
 だからそんな大きな物を挿入されれば、少なからず苦しさを感じるのは当然だと思うのだ。
(それに苦しいだけじゃなくて、こうやって感じてもいるのに)
 そう思いながら額を寝台に敷かれている柔らかな布に擦り付けて薄っすらと目を開けると、目の前に自身の下肢が目に入る。そこはダリューンが腰を引いて刺激を与えてくるたびに、我慢出来ないというように透明な液体を零しているのだ。
 それに思わずゴクリと喉を鳴らすと呼応するように内壁が蠢き、いまだ淫筒の中に留まっているダリューンの亀頭を食むように締め上げる。そしてその形をはっきりと感じ取ったところでたまらず腰を後方に少しだけ押し付けるようにすると、ダリューンは背中に覆いかぶさって肩口に顔を埋め込む格好になりながら耳元で熱い息を吐いた。
「どうか、もう少しだけ力を抜いていただけないでしょうか」
「はっ、あ!ダリューンっ、」
 最中に彼がこんなに切羽詰まった様子を見せるのが初めてのせいか、余裕が無さそうな様子に胸が高鳴るのが分かる。
 しかも体勢が変わったせいで、挿入されている陰茎の角度が変わったのだろう。亀頭が前立腺に触れそうで触れないという微妙な位置になったのにアルスラーンの口からも熱い息が漏れ、さらに陰茎からもトロリと先走りが零れ落ちる。
 あと少しで届きそうで、届かない。そんな絶妙に焦らされている感覚に、もっともっとと先を促す欲求が頭の中で一杯になっていくのが分かる。
(そこ、ゴリって)
 亀頭で前立腺を思いきり突き上げられたら、とんでもなく気持ち良いのではないかと妄想が膨らむともう止まらない。
 耳元ではダリューンが相変わらず力を抜いて欲しいと訴えているのが聞こえる。しかしその声には抑えきれない欲がこめられているので、説得力がまるで無い。さらに彼をこんな風にしているのはアルスラーンなのである。
 そしてそれに気が付くともう駄目だ。
 頭の中で辛うじて本能を押し留めていた理性の糸がプツリと切れる音が響いた次の瞬間、アルスラーンはたまらず背後に押し付けるように腰を揺らめかせていた。

「ふ、あっ……!」
「――ッ!?」
 あと少し腰を引かれたら抜け落ちそうになっていた陰茎が、侵入を拒むように窄まっている括約筋を押し拡げながら再びゆっくりと中に押し入ってくる。
 先程も述べた通り、何しろダリューンの陰茎は大きい。したがって全く違和感が無い訳では無いが、いつもと立場がまるで逆、アルスラーンの方から腰を押し付けて陰茎を飲み込んでいるという状況のせいだろうか。ひどく興奮しており、今はその違和感すらも熱に変換されているみたいだ。
 それに幸いにしてダリューンはこの状況に驚いて身体を完全に固まらせている。
(それ、なら……きもちいい場所を、もっと)
 先ほどの妄想、前立腺を思いきり刺激するのを早速実践してみようと、アルスラーンは無意識に唇を舌で舐め上げた。
 こんな恥ずかしいこと、普段であれば絶対に実践に移すなんて真似はしなかっただろう。しかし理性が完全に失せてしまった今となっては、それを恥ずかしいと思うことは無い。むしろ身体の中にたまる一方の熱を何とかしたくてたまらないのだ。
 アルスラーンはギュッと目をつぶった後に小さく息を吐くと、身体の力を抜くように意識しながらさらに腰を引き――しかしそもそも自分からこんなことをするのは全く初めてのことなので、力の加減が分かるはずもない。
 亀頭の一番太いところが括約筋に引っかかり、その先に一向に進む様子が無いのに焦れて思いきり腰を押し付けてしまったのが運の尽きだ。
 カリ首がヌポリと抜ける感触に熱い息を吐いたのも束の間。腰を押し付けた力を殺しきれずに思いきりゴリ!と前立腺を亀頭で突き上げてしまったのに、背中を弓なりにそらしながら寝台の敷布に頬を擦り付けた。
「か、はっ!?」
「へ、いかっ!?――っ、く!」
 背中を伝って下肢から脳天まで物凄い勢いで甘い痺れが伝わると、腰がブルリと震えた後に目の前が一瞬真っ白に染まる。そしてダリューンの陰茎にまるで押し出されるかのように、自身の陰茎から勢いよく白い液体が噴き上がった。
 しかもその刺激はそれだけでは終わらず、達している最中もダリューンは腰を小さく前後に動かしてくるのだ。おかげで前立腺の膨らみをカリ首でこそぐような刺激を加えられてたまったものではない。
「まっ、待てっ!」
 もうアルスラーン自身は一切動いていない。それなのに前立腺への責め苦は一向に止まる気配が無く、それどころか徐々に淫筒深くまで陰茎が侵入してくる。先ほどの放心した様子から察するにダリューンはほぼ無意識に腰を動かしているのだろう。
 そしてそこでようやく自分自身のとんでもない行動の数々に気が付いたアルスラーンは、顔を真っ赤にしながら腰を前方に逃がそうとするが時はすでに遅し。
 ダリューンは煽られたせいで火がついてしまったのか、逃げる前に腰を両手でガッチリと掴まれたせいで、アルスラーンは寝台の上で小さく足掻くことしか出来ない。しかも逃げようとしたのをまるで咎めるかのように前立腺に亀頭を再び押し付けてくると、これでもかといわんばかりにグッグッと圧をかけてくるのだ。
 それはまるで快感の源を直接弄られているかのような感覚で、前立腺を亀頭で押し上げられるたびに下肢からはプチュプチュと卑猥な音が漏れて目の前で火花のようなものが散る。
「あ、んっ!んんっ!も……それ、また出ちゃ、――っ!」
 現在の生温い状況に物足りなさを感じて煽る真似をしたのはアルスラーンの方だ。だから今のこの流れは完全に自業自得である。
 しかしまさかこんなにすごいものだとは。
 初めて経験する嵐のような快感に、アルスラーンは溺れまいと寝台の布を手で手繰り寄せながら必死に耐える。しかしそんな動きでどうにかなるはずもなく、間髪入れずに再び強制的に高みへと押し上げられる感覚に腰が不規則にヒクつきだすのが止まらない。
 とはいえ精液というものは、そう何度も連続して出せるものでは無い。したがってまた別のものが漏れてしまいそうな危うい感覚に、アルスラーンが焦って泣きを入れたときのことだ。
「ふ、えっ……ダリューン、も、やぁっ!」
「――ッ!?も、申し訳ございませぬ!」
 耳元で小さく息を飲むような気配がした後に慌てた様子で勢いよく陰茎を引き抜かれる。
 それにどうやらダリューンはようやく正気に戻ったらしいと小さく息を吐くが、その動きはつまり彼のカリ首によって前立腺の膨らみを再び撫で上げられるということで。
「あ、ぐっ!?」
 完全に気が抜けて無防備になった瞬間、そんな刺激を加えられてはたまったものではない。ギリギリのところでなんとか押し留めていた熱が一気に溢れ出す感覚に、アルスラーンは咄嗟に下肢に手を伸ばして鈴口を指先で塞ぐ。
 しかしそんなものでどうにかなるはずもない。むしろ中途半端に出口を塞がれたせいで、小さな隙間からプシャァと勢いよく透明な熱い液体が大量に溢れ出したのに目を白黒とさせた。
「な、にこれっ……!?止まらな、っ」
 もちろんアルスラーンにとってこんなことは生まれて初めての経験だ。
 まさか粗相でもしてしまったのかと羞恥心で顔を真っ赤に染めるが、ダリューンはむしろ興奮したような様子でアルスラーンの背に再び圧し掛かる。そして両足の腿を揃えると、その間に自身の怒張を挟み込ませるように滑り込ませた。
「ご安心くださいませ、陛下。そちらは、いわゆる……そうですね、潮というやつでございます」
「しお?」
 潮という名称があるということは、どうやらこの年になって漏らすという恥ずかしいことをしてしまった訳では無いらしいと胸を撫で下ろす。
 しかし潮というやつは精液よりもその量が多いのか、止まる気配がなかなか無い。しかも放出している最中は、ずっと達しているような感覚に襲われ、腰が不規則に震えるのが止まらないのだ。
 そのことをダリューンは知らないのか。いや、先ほども達している際に構わずちょっかいを出してきたので、恐らくはわざとだろう。
 腰をグッと押し進めると、足の間に挟み込んだ陰茎の先端でキュッと持ち上がっている双球を突き上げてくる。するとようやく止まりかけていた潮の残滓が鈴口から勢いよくピュクリと噴き出してしまう。
「ま、待て、まだ――ッ、ひ!?」
「アルスラーン、陛下……っ!」
 不意打ちの放出に驚いてもう勘弁して欲しいと伸び上がるようにして首を振ると、たまらないと言った様子で名前を呼びながらカリ首で会陰部をゴリゴリと刺激される。
 それは前立腺を直接弄られるのに比べたら、それほど刺激が大きい訳では無い。しかし耳元ではダリューンが珍しく息を荒げており、さらに今の体勢は本当に挿入されているみたいだ……なんてことをうっかり考えてしまったせいで、そんなもどかしい刺激にすら逆に劣情を煽られ、腰のあたりに再び熱が集まりだす。
「んっ!んん、ぅ」
「ああ……腰が動いておいでです」
 すでに二度も気をやったはずなのに。
 先ほど散々弄られた前立腺が再び疼きだしたのに思わずダリューンの動きに合わせて腰を前後に揺らすと、耳元でクスリと小さく笑われる。
 しかしそれを恥ずかしいと思う前に腰を掴んでいた手が前に這わされ、いつの間にか再び勃起していた陰茎の亀頭を手の平で押し潰すように刺激を加えられたら、余計なことなんてもう何も考えられない。
「は、う、うぅ」
 感じる場所を不意打ちで弄られたせいで腰から力が抜けてしまい、寝台の上にペタリと伏せる格好になってしまう。すると股の間をダリューンの固く勃起した陰茎がズルリと舐めるように擦り上げ、散々弄られたせいで緩んでいる尻の孔に亀頭の先端が引っかかるようにして潜り込む。
 それにたまらず甘い声を漏らしながら、無意識に先を要求するように腰を揺らめかせたときのことだ。
「そのように煽られて……後悔されても、後戻りは出来ませぬよ、っ」
「ひ、ぐっ!?」
 陰茎から手を外されて腰を固定されると、いつものゆっくりとした動きとは異なる早急な様子で亀頭をズボリと一気に埋め込まれる。そして前立腺を思いきり突き上げられた瞬間、再び目の前で火花のようなものが散るのと同時にアルスラーンの陰茎からはビュクリと白い液体が溢れ出した。
「う、あっ、ああっ!また――ッッッ!!」
「はっ……はぁっ……あと少しだけご辛抱くださいませ」
「ん、んんっ!!」
 彼とはそれなりの回数こういった行為を行っているが、何しろ相手はあのダリューンだ。基本的にアルスラーンに無理をさせることは絶対に無いので、一日に三度も気をやるのはこれが初めての経験だ。
 したがってさすがに限界を感じて寝台に伏せながら意識を朦朧とさせていると、ダリューンはアルスラーンの腰を両手で固定する。それに不穏なものを感じてやっとの思いで顔を上げると、未だ勃起したまま淫筒内を我が物顔で占領していた男の陰茎が、達した際の余韻で窄まっている入口の括約筋で中の亀頭を扱くように再び動き出した。
「陛下っ、そんなに、締め付けられては……!」
「ダリュ…っ、ん!まって、まだ」
 普段のダリューンであれば、アルスラーンが声をかければ即座にその言葉を聞き入れる。しかし彼は彼で限界が近いのか、すでに理性が完全に吹き飛んで余裕がまるで無いらしい。
 切羽詰まった様子でハアハアと荒い息を吐きながら、繰り返し腰を突き入れてくる。おかげでその勢いに押されてアルスラーンの陰茎も寝台の布に擦れてしまう。
「あ、ああっ、ぅ」
 もう限界のはずなのに。
 身体の奥底から再び熱い液体がトプトプと溢れ出して止まらない。そしてそこでいい加減限界を迎え、下肢を震わせながら意識を混濁させる。
 そこで後孔から勢いよく陰茎が引き抜かれると、股の間に恐らくはダリューンの精液と思われる熱い飛沫をぶちまけられるのを感じたが、それに反応するだけの余裕はもはや微塵も残っていなかった。

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