アイル

陛下は騎士をおし倒したい!-6(R18)

 とりあえず一度は舌を口内に侵入させる口付けをしたので、今度はそれほど戸惑うことは無い。
 先ほどの手順を追いながら、薄く開いていた唇の隙間に舌先を割り込ませて互いの舌を擦り合わせるようにすると、あのダリューンと口付けをしているのだという実感が徐々に沸いてくる。
 そしてその事実にじわじわと興奮が高まるにつれ、それに比例するように舌の動きがだんだんと大胆になり、口内奥深くまで犯すように舌を挿入する。
 しかし後になって考えてみると、そうやって調子に乗ってしまったのが不味かった。
「ん……、」
「ふ……う、ぐっ!ん、んんっ!」
 まるでお返しというようにジュと卑猥な水音を響かせながら逆に舌を吸い上げられると扱かれて。それはアルスラーンの、どこかたどたどしい舌の動きとはまるで異なる遠慮の無いものだ。
 そしてその瞬間にそれまでとは明らかに異なる重苦しい熱がズンと下腹部あたりに広がり、瞬間的に身体から力が抜けて寝台の上にペタリと座り込む格好になってしまった。
「ちょっと、まってくれ」
 これはまずい。全く触れていないのに、勃ってしまいそうだ。というか少し反応している。
(そういえば、前にダリューンに深い口付けをされた時もそうだった)
 それであの時は、こういう性的な接触に関して意識していなかったのもあってとても驚き、口付けの繋がりを無理矢理解いてしまったのだ。
 そしてまた似たような展開である。
 このままではどう考えても、ダリューンに主導権を奪われてしまう未来しか見えない。だがそもそもアルスラーンは、現時点でダリューンに尻の孔を掘られるなんて微塵も考えていないのだ。
 というわけで何とかしなければと荒い息を吐きながら必死に考え、そこで偶然ダリューンの下肢が目に入ったのに動きを止めた。
(……、これだ!)
 もともと窮地に陥っていたのもあり、アルスラーンがそこから次の行動に移すのは早い。
 ダリューンの両足の間に身体をねじ込むと、恐る恐るその中心を手の平で撫でてみる。するとダリューンが焦ったようにお待ちくださいと声を上げながら手を伸ばしてきたのに口角を上げた。
「陛下!?いけません、そこは――っ、く」
 先ほどとは立場が一気に逆転だ。
 ダリューンが強く出られないのをこれ幸いと、さっさと下衣を寛げて中から陰茎を取り出す。
 ソコは勃起しているのも相まって、その外見に見合った大きさで少々圧倒される。しかしそれと同時に、自分だけでなくダリューンも兆しているのだという事実に気分を上向かせながら敏感な先端に指先を這わせると、陰茎がビクリと脈打ち、喉を詰まらせる声が上方から聞こえてきた。
(ほう)
 ダリューンのそんな余裕の無さそうな声は、今まで一度も聞いたことがない。
 それならとさらに調子に乗ると、先端を指先で撫でながら少し考えた後、口をパカリと開けて口内に含んでみた。
「んっ……ちゅ」
 この手の経験に乏しいアルスラーンが、何故こんな性技を知っているのか。理由は単純で、全ては昔に習った座学の知識である。
(あの手のものは当たり障り無く書かれたもので、あまり役立たないと思っていたのだが)
 しかしダリューンの陰茎を目の前にした時、女性からそういう行為を仕掛けられることもあると書かれていたのを偶然思い出したのだ。
 それならと実際に試してみると、ダリューンの反応はそう悪く無い。
(まあよくよく考えてみると、本の中では女性が男性にしていた行為なのだがな。とはいえ勢いで口に含んだは良いものの、ここからいったいどうすれば……)
 深い口付けはダリューンに以前されたことがあるので、とりあえず何とかなった。しかしここから先は全てが未知の領域だ。
 とりあえず手で扱くのと同じように、口を窄めて顔を上下に動かす。さらに自分が触れられて気持ち良い場所、裏筋あたりを舌で恐る恐る舐め上げてみると、ダリューンの腰がピクリと反応した。
「ここが、いいのか?」
「はっ……たしかに、良くはありますが」
 しかし陛下がそんなことをされる必要など無いのですと、口で抵抗する程度の余裕はまだあるらしい。
 さらに往生際悪くアルスラーンの口の動きを止めようと頭に手を伸ばしてきたので、そうはさせまいと先端を口蓋に擦りつけながら舌の中程で裏筋をベロリと思いきり舐め上げてやった。
「――ッッ!それ、以上はさすがに。本当に自制が効かなくなってしまいます、っ……は」
 切羽詰まった声音に顔を上げると、ダリューンの目の端がほんのりと赤く染まっており、口元を手の平で覆い隠している。どうやら本当に限界が近いのだろう。初めて口付けをした時と、様子が似ているなとぼんやりと考える。
 そしてそのアルスラーンの予想は正しかった。
 どういうことかというと、ダリューンはここにきて己の理性の壁に少しずつ亀裂が入りはじめているのを感じており、だからこそ彼にしては珍しくアルスラーンの頭に手を伸ばすという実力行使に出てまでその動きを止めようとしたのだ。
 だがそこで駄目押しとばかりに、敏感な箇所である裏筋と亀頭に刺激を加えられたのである。
 さすがのダリューンも、そこまでされてはたまったものではない。それまでなんとか保っていた理性の壁に決定的な大きな亀裂が入ると、ガラガラと音を立てて崩れていく。そしてその瞬間、ダリューンの纏っている雰囲気が一気に雄臭いものに変化した。
 その変化はアルスラーンも本能的に感じ取っていたものの、残念かな。その意味を瞬時に理解出来るほど場数を踏んでいない。したがって様子の変化を感じつつも、身の危険を感じるまでには至らなかった。

「陛下のお手を煩わせてばかりで申し訳ございませぬ。今度は是非私に、その役目をお譲りいただけないでしょうか」
「ん、う?」
 アルスラーンはダリューンの明らかに動揺した様子に気をよくして、未だ頭を前後に動かして口蓋に先端を擦り付けていた。
 しかし彼の指先が、口内に陰茎を含んでいるせいで膨らんでいる頬を思わせぶりになぞってくるのである。
 それに思わず動きを止めて顔を上げると、そんな優しい手つきとは裏腹にやや強引に腰を引かれ、口内一杯に含んでいた陰茎がズルリと口から零れ落ちてしまった。
「んぐっ、ふ、うう……あと、少しだったのに」
 陰茎の先端の孔から漏れていた先走りは、先走りというわりには粘ついていたところから察するに、限界はかなり近かったはずだ。
 アルスラーンとしては、このまま口内で射精されてしまってもやぶさかではないと思っていたのだがと考えつつ、目の前にある完全に勃起した陰茎に名残惜し気に手を這わす。
 だがいけませんというように両手首を片手で捕まえられ、動きを阻止されてしまった。
「次は私にその栄誉を」
 陛下にご満足いただけるように誠心誠意努力させていただきますと口元に笑みを浮かべながら宣言されると、空いている方の手で肩をトンと押される。さらにその手を素早く後頭部に回され、頭をぶつけないように気を使ってくれるところまで完璧だ。
 そして押し倒されてしまったという事実に気がつく前にさっさと下衣を寛げられると、あっという間に陰茎を根元まで銜えられてしまった。
 そしてこうなると、あとはもうダリューンの独擅場だ。
 他人の手で弄られること自体が初めてのアルスラーンが、いきなり口淫なんてされてそう長い間耐えられるはずも無い。しかもダリューンは、陛下はこちらがお好きなのですよね?なんて言いながら、敏感な裏筋やら先端を重点的に攻めてくるのである。
「な、んで……それを知って、っう、あ、あ、んっ!」
 まあ男であれば皆一様にその場所は気持ち良いと言うのだろうが。
 しかしどこか釈然としないのに疑問の言葉を投げかけると、ダリューンは口から陰茎を取り出す。そしてその代わりに剥き出しになっている亀頭を手の平でやわやわと握りこみながら、やはりこちらを弄るのがお好きなのですかと実に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「先ほど陛下が私の物を含んでくださった際、先端付近を重点的に刺激してくださったのでそうなのではないかと思いまして」
 つまりは自業自得というやつである。
 そこでアルスラーンが言い訳を口にする前に再び口内に亀頭を含まれてしまい、先端を口蓋でグリグリと攻められ、さらに裏筋を舌で押しつぶされ、口内に含まれていない竿を手でゴシゴシと扱かれるという三点攻めをされたらもう駄目だ。
 腰のあたりにわだかまっていた熱が一気に陰茎の根元あたりに集まってくると、あとはあっという間である。
 ダリューンの口内に射精をしては駄目だとか、そういうことを考える余裕など一切無い。むしろ本能的に腰を前後にカクカクと動かしてしまい、気がついた時には大量の精液を放出してしまっていた。
 だが、まだ責め苦は終わらない。今度は陰茎を根元まで口内に含まれてしまうと、中に放出してしまった精液を陰茎全体に塗りつけるように、顔を大きく前後に動かされる。
 すると口内の精液がかき混ぜられているのか、ジュボジュボと激しい音が下肢から絶え間なく聞こえてきていたたまれない。
 先ほど口付けをしている際に水音が立ってしまい、それを聞きながら少し興奮していたが、あんなの可愛いものだ。
 わざとらしさを感じるくらいの生々しい音に、挿入したらこんな感じなのだろうか、なんて馬鹿なことをうっかりと考えてしまうくらいである。そしてそんな馬鹿げた妄想にすら興奮してしまい、懲りずに陰茎を再び固くしてしまうあたりどうしようもない。
 しかもダリューンはそんな考えも全てお見通しだと言わんばかりに、アルスラーンと視線が絡み合ったところでスッと目を細めると、ジュッと強く吸い上げてくるのだ。
「もっ、むり……っ!ふ、えっ」
「しかしまだこちらは反応しておられますし……足りないのでは?」
「そんな、っ」
 そんなこと無いと言おうとしても、事実彼の言う通り陰茎を膨らませてしまっているのであまり説得力は無いだろう。
 それならとひんひんと泣きを入れながら、両腿を閉じて何とか彼の動きを止めようとしたが、過ぎた快感のせいで足に大した力が入らずあまり意味が無い。
 こうなってしまっては、先ほどのダリューンと同じく手で強制的にその動きを止めるしかないだろう。そう考えたアルスラーンは、寝台に肘をつきながら何とか上体を起こす。
 しかしその途中で部屋の扉が目の端に入り、そこでピタリと動きを止めた。
(そういえば、)
 ここは王宮では無いのだ。そしてよくよく考えてみると、隣室には護衛のギーヴがいることを思い出したのである。
 隣室と繋がる扉は閉められており、もちろん壁は木できちんと仕切られているが所詮ここは船の中だ。声を潜めていたわけでもないので、今までの会話はどう考えても隣に筒抜け状態とみて間違いないだろう。
 とはいえアルスラーンは国王だ。王宮に入ってからは、風呂上がりの着替えまで女官の世話になっているくらいである。だから今さらそのくらい、どうということは無いだろうと思うかもしれないが問題はそこでは無い。
 そうではなくて、以前にダリューンを押し倒すのだと宣言してしまったギーヴ相手に、実際には己の女性のような嬌声を聞かれてしまったということが大問題なのだ。
 はっきり言って、これでは面目丸つぶれだ。
 扉の向こう側から人の気配は感じられないが、逆にそれが気を使われているようで情けなさが倍増なんてものではない。しかもダリューンはそんな時に限って、精液で濡れそぼった手を尻の孔に手を伸ばしてくるのだ。
 そこでようやくアルスラーンはある可能性に気がつくと、もの凄く嫌な予感がするのにゴクリと喉を慣らした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。これは……ええと、」
 私が挿入されるのだろうかという言葉は少々恥ずかしかったので口ごもってしまったが、言いたいことは大体察したのだろう。ダリューンは切なそうな表情をしながら、まだ難しいでしょうかと尋ねてくる。
 だがアルスラーンは今の今までダリューンに挿入する気満々だったので、この展開は青天の霹靂なんてものではない。
 まさかの展開に理解が追いつかずに固まっていると、それを了承の意味と取ったのか。ダリューンは懐から小瓶を取り出して、股の間にその中身を垂らす。そしてそこに塗り広げるように指先を這わせられるとグジュリと音が鳴ったのに、アルスラーンはそれが香油かとようやく理解した。
 なんともまあ、用意周到なことである。
 アルスラーンもギーヴに相談した日以降は、ちゃっかりと香油を懐に忍ばせているので人のことは全く言えないのだが。しかし一見すると、そんなことなど一切考えていなそうなダリューンが……と現実逃避をしていられたのもそこまでだ。
 それまで尻の孔周辺に香油を塗り広げ、なおかつ緊張した筋肉を揉みほぐすように動いていた指の先端が、孔の中心に添えられてツプリと中に入ってきたのに意識が一気に下肢に集中する。
 そしてそこで、ダリューンが己のことを女性役として考えていたのかとはっきりと理解した。

「あ、あーっ、う、ん、んんっ」
「痛みがございましたらお声掛けくださいませ。すぐに止めますので」
 ダリューンの言葉にこくこくと頷く。というかアルスラーン的には、今すぐにでも指を引き抜いてもらい、どちらが挿入するかということを、二人で真剣に議論したいくらいの勢いなのだが。
 しかしダリューンが先ほど見せた切なそうな表情を思い出すと、どうにも言い出し辛い。
 それに現在進行形で、ダリューンはご無礼をどうかお許しくださいませと耳元で吐息混じりに囁きながら、熱っぽい瞳でアルスラーンのことを見つめているのである。
(ここまで言われてしまうと、な)
 ダリューンのことを押し倒したいという気持ちが消えるわけでは無いが、なんだか全てがどうでも良くなってくるから不思議なものだ。
 これが絆されるということかもしれないなと考えながら全身から力を抜くと、まるでその気持ちを読んでいるのかのように二本目の指を挿入される。
 それからあとはなし崩しだ。
 違和感が多少ある程度で痛みは特に無いので黙って指を受け入れていると、最初は遠慮がちに動いていた指の動きがだんだんと大胆になってくる。入り口付近で二本の指の股を開いてパカリと口を広げられ、さらに内壁に指の腹を這わせながら、少しだけ膨らんでいる箇所を何故か執拗に弄くりまわしてくるのだ。
 するとなんだかムズムズとした感覚が走るのに、勝手に喉が鳴ってしまい、そこでダリューンは一度手を止め、顔を覗きこみながら様子を伺ってきた。
「こちらを弄られると、何か感じますか?」
「う、うう」
 二本の指を内壁の膨らみに添えられ、反応を確認するように先ほどまでの中途半端な力加減ではない、強い力でグッと押し上げられると自然と顎が上がってしまう。
 そしてその瞬間、それまでのムズムズした感覚ではなく、下腹部に重苦しい熱のようなものが広がったのに思わず眉根を寄せた。
「感じるといえば感じるが……なんだか今まで感じたことのない奇妙な感覚だ。熱っぽいというか」
「なるほど、熱っぽい感覚でございますか」
 それを聞いた途端、ダリューンは何やら嬉しそうな表情を浮かべている。しかし何か勘違いをしていそうなので、快感とかでは無いと思うと念のために一言付け加えたが、分かりましたと言いつつも笑みがさらに深まるのである。
 だがそうやって念押ししてしまったのがいけなかったのか。それからは先ほどまでとは一転、徹底的にその膨らみを無視するのだ。
 もちろん最初はそれほど意識をしていた訳では無いので、膨らみを無視しているのではなく、入り口を解しているのかな程度に考えていた。
 ただわざと膨らみを避けるように、その両脇を指の腹でスリスリと刺激されるとさすがにその意図に気がつく。
(しかも、これは……やはり、快感を感じているのか?)
 最初はまさかとも思った。しかし恐る恐る下肢に目を向けてみると、散々弄くり回されてあと少しという状態で放置されていた陰茎の先端から、再びトロリと先走りが零れているのだ。
 もちろんそれに目の前に陣取っているダリューンが気がついていないはずがなく。目を細めると、今度はその膨らみを二本の指で挟み込むように力をこめられる。
 すると途端にそこからジワジワと浸食するような熱が広がる感覚に大きく腰をビクつかせたところで、ダリューンは確認するようにその刺激を何度も繰り返しはじめた。
「おや。もしや中で快感を感じ取っていらっしゃるのでは?」
「はっ!う、ううー」
 そこでもう片方の手でほらと言わんばかりに、亀頭に先走りを塗り広げるように撫でられてしまっては、限界一歩手前状態のアルスラーンがそう長い間耐えられるはずもない。体内でグルグルとわだかまっている熱が、明らかにジリジリとせり上がってくるのが分かる。
 それと呼応するように内壁が大きくうねるように蠢いて中の指を締め上げると、お返しと言わんばかりに時折中の指が膨らみの表面を掠めるように撫でるのが焦れったくてたまらない。
 でもなんだか気持ち良くて、頭の中は早く達したいという言葉で一杯だ。
 そこでついに白旗を上げると、アルスラーンは必死にダリューンの方へ顔を向けた。
「ダリューン、おねがいだ、っ。膨らんでいるところを、もっと……っ」
 もう恥も外聞も無い。口から出てくるのは、先を請う言葉だけだ。
 そしてそんな風にアルスラーンが乱れきっている様を目にするのは、ダリューンは初めてである。その姿を目にした瞬間に胸の内でふつふつと征服欲が沸き上がるのを感じながら無意識に唇を舐め上げた。
 そんなダリューンの様子は、普段は絶対に表に出していない彼の性欲を感じさせるものだ。
 似たような雰囲気は初めて口付けをした時や先ほど陰茎を舐めた時など、何度か目にしたことはある。しかしそのどれよりも……雄臭い。
 正直、この視線だけでもたまらない。
 それを意識しただけで、背中をゾクゾクとした感覚が這い登っていくのを感じながら陶然とした表情を浮かべていると、ダリューンは陛下の仰せのままにと答えながら三本目の指を尻の孔に添える。それから様子を伺うように何度か縁を撫でた後、それをゆっくりと埋め込んできた。
「う、あ、ああ……なか、はいって、きたぁっ」
「ええ……こんなに口が開いて、もう指を三本も銜えこんでいらっしゃいます」
 お分かりになりますかという言葉につられるように目線を下に向けると、尻の孔が目一杯拡がって指の束を飲み込んでいるのが目に入る。
 そこは指が出入りする度に細かく泡だった香油が縁から溢れており、なかなかに淫靡な光景だ。
(なんか、すごい、っ)
 よくよく考えてみると、目の前の光景は自分の身体で起きていることなので、それを見て興奮するのも色々と問題があるような気がしなくもない。とはいえそもそもそんな卑猥な光景を見ること自体が生まれて初めての経験なので、どうしても気になって目がいってしまうのは大目に見て欲しい。
 するとダリューンはそんな考えも全てお見通しだと言わんばかりに、先ほどから妙な感覚の走る淫筒の膨らみに狙いをつけてクッと押し上げてくる。しかもそれを一度だけではなく、膨らみに指の腹を押し当てた状態で二度三度と繰り返すのだ。
「ふ、えっ!そこ……っ、やっぱり」
「感じられますか?」
「う、うう、なんか、やぁっ!」
「こちらは前立腺と言うそうです。男性でも感じる場所だそうですから、ご安心くださいませ」
 どうぞお任せくださいと言いながらそこでの感覚を教え込むように刺激を繰り返されている間に、薄ぼんやりと感じていた程度の快感がだんだんと形をなしてくるのが分かる。
 ダリューンの言う通り、感じるといえば感じているような気もする。それに男性でも感じる場所だと言われると、多少は気持ちが楽になったのは確かだ。
 だが陰茎で感じるのとは異なり、いつまでも尾を引くような慣れない感覚は少しだけ怖い。
 だからもう勘弁して欲しいと必死に首を振るがダリューンは解放するつもりは無いのか。先走りがたくさん出て限界が近いように思うのですが……なんて言いながら、アルスラーン自身でも気づかぬ間に陰茎から大量に零れ落ちていた先走りを指先で腹の上に塗り広げる。
 さらには指の束を一度入り口付近まで引き抜くと、ジュプ!と派手な音を立てながら突き入れられて。
「まって、それ、ほんとに――っ、ひ!あ、んっ!ん、んんっ!」
 本当に挿入されているかのような指の動きに、はあはあと加速度的に息が荒くなるのが止まらない。グポグポと絶え間なく粘着質な音が下肢から漏れ聞こえてくるのにも酷く煽られる。
 さらには駄目押しといわんばかりに、前立腺と呼ばれる膨らみを指の腹でグーッと押し上げられて。それとほぼ同時に上体に覆いかぶさるような格好で唇を塞がれると、互いの舌を絡ませあうようにしながら吸われて身体から力が抜けてしまう。そこで不意にダリューンの固い腹筋に勃起して赤く膨れた亀頭が擦れ、その瞬間に下肢がブルリと大きく震えた。
 そんな風に色々な箇所を一気に刺激されては、もともと限界状態のアルスラーンが耐えられるはずもないだろう。
「ふ、ぐっ……~~ッッッ!?」
 口を塞がれているせいで声にならない嬌声を上げながら、先端の小さな孔から大量の精液を噴き上げてしまう。
 しかし責め苦はまだ終わらない。
 射精後の開放感に、ダリューンが目の前にいるのも構わず寝台の上に手足を投げ出して脱力していた時のこと。
 何故か両足を抱え上げられ、胸の辺りで膝を揃える格好になるよう小さく折り畳まれたのにアルスラーンは目を瞬かせた。
「う、え?」
「失礼いたします。あと少しだけ、お付き合いいただきたく……っ、は」
「――っふ、あ!?」
 まだ全く頭が回っていないのもあって、正直何が何やらさっぱりだ。
 ただ覆いかぶさるような格好で上から体重をグッとかけられると、足の間にズルリと熱の塊が滑る感覚が走ったのに、ダリューンは足の間で己の陰茎を扱いているのかと何となく理解する。
 つまりアルスラーンは、世間一般でいうところの素股をしかけられていた。
「はっ……へい、か」
 腰が前後に動かされるたびに、足の間からダリューンの陰茎が覗く。そして足の間から陰茎が覗き見える時点で、なかなかの大きさであることが分かるだろう。
 カリ首が張り、どっしりとした質量のある陰茎の先端がアルスラーンの陰茎の裏筋あたりを気まぐれに擦り上げてくる。さらに体重をかけられると、自分自身の腿で陰茎を押し潰す格好になって、再びはっきりとした熱が下肢に広がる。
(う、あ……また、反応してしまう)
 とはいえこれまで一人で二度も射精しているのだ。さすがにこれ以上はどうかと思ったので、下肢に力をこめて何とか我慢しようとする。しかし焦れったい刺激に、ついつい腰を揺らしてしまったのが運の尽きだ。
 すぐにそれに気がついたダリューンは、腰の動きを止めて互いの陰茎を手の平で握りこみ、裏筋を擦り合わせるようにゴシゴシと扱いてくる。
「は、あ、うう……きもち、ひ、よぉっ」
 どう考えても、ダリューンの手の平の上で転がされてしまっているのは間違い無い。その状況がなんだか恥ずかしくて、なんとか堪えなければと思うのに。
 慣れ親しんだ手による直接的な刺激に、あっという間に意識が蕩けてしまう。
 さらに不意に先端の小さな孔に指先を添えられるとグリとくじられて。その瞬間腹の底から沸き上がってくる熱の感覚に、身体を丸めてダリューンを両足で挟み込みながら下肢を震わせると、先端からトロリと白い液体を溢れさせた。
「ヒ、――う、ううっ」
 これまで何度も放出したせいで、精液の量は常よりも少なくサラサラとしている。それにさんざん弄られた亀頭あたりが少々痛い。
 そんなことを考えながらしばらくの間放心状態になっていると、尻の孔あたりに熱の塊を押しつけられて。それが陰茎であると気がついた時には、先端が少しだけクプリと潜り込む感覚が走ったのに慌てて目を見開いた。
「っ!?ま、まさか」
 もちろん尻の孔を手で弄られた時点で、陰茎を挿入されるかもしれないとある程度は覚悟していたつもりだ。しかしいざその場面に直面するとやはり本能的に抗いたくなってしまうもので、反射的に挿入を阻止しようとダリューンの胸元に手を伸ばしてしまう。
 するとそんな心の葛藤を読み取ってくれたのか、意外にもそれ以上深く挿入されることはなく。むしろ慌てた様子のアルスラーンを宥めるように、頬を指先で撫でられた。
「どうか、ご安心くださいませ。さすがにいきなり全ては挿入いたしません」
「そ、そうなのか?」
 とかなんとか言いつつ未だに先端は潜り込んだ状態なので、少しばかり疑心暗鬼な心境になってしまうのは許して欲しい。しかもダリューンは、その状態で自らの手で竿を扱いているのだ。
 ただ同じ男としてそのままの状態で放置するのが辛いのは分かる。それに何より、あのダリューンの余裕の無さそうな表情を見ていると何だか興奮してくるのである。
 したがってそのままの状態で彼の様子を伺っていると、さらに腰をクッと押し付けられて。亀頭の中程まで挿入された状態で大量の熱い液体をぶちまけられ、射精の勢いで精液が淫筒の奥深くまで流れ込む感覚にブルリと下肢を震わせた。
「う、あっ!?え、あ、えっ?」
「はっ……失礼、いたしました」
 先の宣言通り、確かに陰茎は全て挿入されなかった。しかしまさか中で出されるとは夢にも思っていなかったので、驚いたなんてものではない。
 慌てて上体を起こすと、入り口のほど近くに精液を出されたせいか。中に出された白い液体が次から次へと溢れてきて、腹にいくら力をこめてもその流れが止まらないのである。
「これは、どうすれば」
「中に留めておきますと腹を下してしまいますので、そのまま外に出るのにまかせて頂ければと」
「!?」
 そんなことを言われてもという感じだ。
 腹を下すのは少々困るが、今の状況はまるで漏らしているかのようなのである。そんな状況は、すでに正気に戻っているアルスラーンにとって恥ずかしくてたまらない。
 というわけで、ダリューンに言われたことはひとまず無視だ。
 ともかくどうにかして精液の流れを止めたい一心で、とりあえず指先を尻の孔に添えてみる。しかしそれでどうにかなるはずもなく。
 むしろそんな格好をしているせいで動けなくなっているのをこれ幸いと言わんばかりに、向かい合う格好で膝の上に乗せられる。それから一言謝罪の言葉を入れられた後に両手で双丘を割り開かれると、そこに数本の指を挿入された。
 そしてその直後、中に出された精液がドロリと大量に流れ出す感覚に、目の前にあるダリューンの肩口に額を押しつけながら下肢を震わせるしか無かった。
「ふ、えっ……も、はやく」
「申し訳ございませぬ。今しばらくお待ちを」
 いい年してダリューンに泣きつく有様とは。なんとも情けないものであると、アルスラーン自身も感じてはいる。
 しかしよくよく考えてみると、そもそもアルスラーン自身が誘いをかけたのをきっかけに、こんな恥ずかしい状態になったのだ。
(ダリューンのことを押し倒そうと思っていたはずなのに……)
 それがいつの間にか逆に押し倒されて、その結果のこれとは。
 当初の下心を思い出すと、もう何も言えない。
 とはいえやはり恥ずかしさだけはどうにもならず、中のものを一通り掻き出されたところで、アルスラーンは寝具の中に頭まですっぽりと潜りこんだ。
 結局最終的には宥めすかされた末に寝具の中から這い出たが、たっぷり一刻ほどは籠城していただろう。
 だがそれほど手を焼かされたにも関わらず、ダリューンの顔は始終緩みきっていたのは言うまでもない。

 それからあれやこれやと甘やかされ放題されながら衣服を整えられ、その間は今夜は眠れるだろうかとどうでも良い心配をしながら恥ずかしさを誤魔化していた。
 しかし新しいことずくめで思ったよりも疲労していたのか。目を閉じると、すぐに眠りの世界に旅立った。


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