アイル

アルスラーンと二人の臣下-4(R18)

 最初は軽くついばむような口付けを。それから徐々に口内深くまで舌が侵入してくると、まるでアルスラーンが感じる場所を探っているかのようにしつこく色々な場所を舐め回される。
 そして唇を外される頃には口内の感じる場所をすっかりと暴かれ、いつの間にか絨毯の上に押し倒される格好になりながら、とろけきった表情をギーヴの眼前に晒していた。
「口付けだけでこんなに喜んで頂けるとは光栄至極」
「はっ……あ」
 口は普段から常に使っている箇所なので全く意識したことが無かった。それだけに、まさかこんなにも感じる場所だとはという感じだ。
 そういえば例の書物の中でも口付けで気持ち良さそうにしている描写があったが、今の状態はまさにそれだろう。いつの間にか全く関係無いはずの下肢まで熱を持っているのを感じて思わず両膝を擦り合わせてしまう。
 それにギーヴは気が付いたのか。口元に小さく笑みを浮かべたのに嫌な予感を覚えて咄嗟に足を閉じようとするものの時はすでに遅し。素早く身体を両足の間に入れられて膝頭を股間に押し当てられてしまい、しばらくすると足を動かされるたびにそこからグジュグジュという卑猥な音が漏れだしたのにたまらず泣き言をこぼした。
「そこはっ、待っ……――ッ、ん、んんっ!」
「大丈夫ですから、どうぞお任せくださいませ」
 アルスラーンにしてみれば、お任せした結果が今の状態なのだから全く信用にならないのだが。ギーヴはアルスラーンがやっとの思いで口にした静止の言葉も、まるでお構い無しといった様子で膝を押し付けてくる。
 おかげで勃起して剥き出しになっている亀頭に下着の布地に擦れて、その度に鋭い刺激が全身に走る感覚に腰が不規則にブルリと震えるのが止まらない。
「はっ、う、うう……も、だめ……っ、ほんとに、」
 このままでは、達してしまうのは時間の問題だ。こんなに一気に頂点まで上り詰めたのは、自らの手で初めて射精を経験した時以来だろうか。
 こうなってしまうと頭の中がグチャグチャになって、何が何だか訳が分からなくなってしまうのだ。
 この感覚がどうにも慣れないのに、いつもの自慰であればここで一度手を止め、あまりに高まり過ぎた熱を少し落ち着かせてから再開するのが常である。
 だから何とかギーヴにそれを伝えようと先ほどから頑張って訴えているのだが、肝心なギーヴにはまるでその意図が伝わっていない。
 むしろアルスラーンがそうやって訴えれば訴えるほど、興奮したような様子で足を動かしてくるのだ。
「陛下、すごい音がしますね。あと少しで達してしまいそうですか?」
 なんて調子である。
 こうなったら、あとは実力行使しか無いだろう。
 それならと下肢に手を伸ばすものの、逆に両手とも絡め取られて絨毯の上に縫い付けられてしまって。さらに上体に覆いかぶさるような格好になり、膝を押し付けたままの状態でぐっぐっと陰茎全体を押し潰すように圧迫されると、瞬間的に腹の奥底から熱の奔流が湧き上がってくるのを感じる。
「だめ、出ちゃ――っ、あ!く、んっ!」
「どうか、我慢なさらず」
 達してくださいませと耳元で囁かれた直後のことだ。
「いっちゃ――ッッ!」
 まるでその言葉に促されるかのようにブルブルと下肢が震え、勢いよく熱い液体が体内から溢れてくる。そしてその直後、今まで感じたことの無いような解放感が下肢に広がった。

「う、あ……」
 言葉では言い表せないくらい、物凄く気持ちが良い。しかしその数秒後にジットリとした湿り気が広がる感覚に粗相をした時と似たような違和感を覚え、たまらず両腕で目元を覆い隠した。
「おやおや。よろしくなかったですか?」
 対してギーヴはというと上機嫌な様子でさらに下衣を脱がせにかかり、アルスラーンがそれに気が付いた時にはあとは下着だけという状態にされてしまう。
 もちろん普段の着替えや湯浴みなどの際に人の手を借りるので、裸を他人に見られることに対しての羞恥心はほぼ無い。とはいえ射精直後の汚れている状態となると話は別だ。
 だからこれはたまらないと慌てて手を伸ばすものの、ギーヴは慣れた様子でその手を回避すると、あっという間にアルスラーンの下肢を裸に剥いてしまう。
 そしてほら見てくださいというように下肢に手を這わされ、撫でるように指先を動かされるとグチュリと粘着質な音が漏れた。
「ああ、大分汚れてしまいましたね」
 こんなの見てはいけないと思うのに。
 自分以外の第三者の手が自身の際どい箇所に触れているという事実に興奮しているのか、そこから目を離すことが出来ない。
 そしてギーヴは、わざと見せつけるようにことさらゆっくりと腿の付け根から膝まで思わせぶりにツーッと辿るのだ。
 さらに膝裏に手を回して両足を肩の上に抱え上げられる格好になると、腰を上向きに固定される。すると普段は陰茎に隠れて見えない尻の孔まで丸見えになり、ソコに数本の指先を這わされた。
「えっと……その、誰かとこういうことをするのは初めてだから」
 だからお手柔らかに頼むと小声で告げると、ギーヴは何度か目を瞬かせる。しかしすぐに口元に笑みを浮かべながら分かりましたと答えた。
「正直なところ、半信半疑だったのですが。しかしそのご様子ですと、自身で弄られていたというのはどうやら真実のようですね」
「うう」
 すでにギーヴに露見していることとは言え、こうして改めて面と向かって言われるとなかなか精神的にくるものがある。おかげで次から次へと襲って来る羞恥心と戦っていると、その隙に指先に力を込められてヌルリとそれが体内に入って来た。
「ふっ、あ!は……ぁっ」
「慣れるまでの間は少々苦しいかもしれませぬが、しばらくの間はどうかご辛抱くださいませ」
 ギーヴは一見すると優男風の見た目なので勘違いしがちだが、その体躯は完全に武人のそれだ。ということは指もアルスラーンに比べると随分と太いのだが、すっかりそれを失念していたせいで思ったよりも強い圧迫感に思わず腰を上方に逃がしてしまう。
 しかしギーヴがそれを許すはずもなく。宥めるように空いている方の手で腰を撫でながらも、遠慮無く出た分だけ指を挿入してくる。そして両肩に抱え上げている足を腕でガッチリと固定すると、潤滑油を足しますからと口にしながら胸元からそれを取り出した。
「何故、そんなものを……っ!?」
 ギーヴもこの部屋に来るまでの間は、まさかアルスラーンとこういう行為をするとは夢にも思っていなかったはずだ。したがって思わず目を剥いてギーヴの顔を見つめるが、彼は片眉を上げるだけで相変わらずその真意は読めない。
 しかしいきなりこういう状況になっても問題無く潤滑油が出てくるあたりが、王宮内でも色男として名を馳せている所以なのか。
 そこでようやくとんでもない人物と関係を持ってしまったのではないかという考えが浮かんだが、すべては後の祭りであった。

 それからは宣言通り。
 過剰すぎるほどに潤滑油を足されて指の本数を一本二本と順番に増やされ、ほとんど触れられていない陰茎が完全に勃起する頃には、三本の指の束がズッポリと埋めこまれていた。
 その三本の指の束を、陰茎を出し挿れする時のように先端から根元までゆっくりと出し入れを繰り返されると、ゾクゾクとした快感が下肢に広がる。さらに根元まで埋め込んだ状態で内壁を押し広げるように指の束を中でクパリと広げられて。
 少しだけ開いた入口から冷たい外気が体内に侵入してくると、散々弄られたおかげで熱を発している内壁を無遠慮に撫でていくような奇妙な感覚に下肢が小刻みに震えるのが止まらない。
 そしてアルスラーンは、自身の陰茎の先端の割れ目から、先走り――のわりには粘度の高い液体が溢れ、ゆっくりと竿を伝っていく様子を見つめながら熱い息を吐いた。
「はっ……う、うう」
 陰茎が完全に勃起してからは一向に決定的な刺激を与えられていないせいで、そんな些細な刺激にも目の奥がチカチカとする。
(もう、イきたい)
 そう一度でも考えてしまうと、ここ数週間は式の準備のためにずっと禁欲生活のようなことをしていたのも相まって、まるで我慢がきかない。
 気が付いた時には褒美を強請るように内壁が大きくうねると、中に埋め込まれている指を締め付けながら先を促していた。
「ねっ、もう……いれて、っ」
「おや。まさか陛下からそのように求めていただけるとは」
 ギーヴは目を細めると、わざと羞恥心を煽るような言葉をかけてくる。
 おかげでなけなしの理性が反応してしまい、あまりの恥ずかしさに半泣きのような表情をしながらうろたえているとその隙に身体を反転させられて。気が付いた時には四つん這いの格好になって背中に覆いかぶさられると、耳元で俺はそういうの結構好きですよと囁くように告げられた。
 さらに駄目押しとばかりに両手で双丘を割り開かれると、常よりも赤く色付いているソコへ亀頭を押し付けられる。すると散々弄られたせいで常よりも緩んでいるのか、その形に合わせて口が拡がると、先端がズズズと中に入っていく感覚に背中をブルリと震わせた。
「あ、ううっ……イっちゃ、――ッ!」
 寒気のような感覚が背中を伝って脳天まで這い登っていっている途中で、前立腺を亀頭でゴリと思いきり突き上げられて目の前で火花が散る。そして瞬間的に下肢に熱が広がった直後、ドプリと大量の精液を溢れさせて絨毯の上に零してしまっていた。
「――、く……挿れただけで、達してしまわれるとはなかなか」
「あ、あっ、う……ん、んん」
 ここのところすっかりご無沙汰だったせいか。精液の放出がなかなか止まらないのに身悶えていると、嬉々とした様子のギーヴに亀頭を指先で撫でくりまわされる。
 だが達している最中に弄られることほど辛いことはないのだ。
 したがっていやいやと首を振ると意外にも呆気なく手を離された。しかしそれに安堵したのも束の間。
「それなら……こちらにもお付き合いいただきますよ、っ!」
 代わりにと言わんばかりに腰を勢いよく突き入れられると、前立腺をこそぐようにしながら奥まで一気に陰茎を埋め込まれる。そして最奥をグッと抉られ、張形でも届かない奥深くまで無遠慮に暴かれる感覚に背中を弓なりに反らした。
「待って、まだっ――あ、ああっ!ひ、ぐっ!?」
 再び身体の奥底から熱が生じる感覚を覚えて、たまらず口を開いてハッハッと荒い息を吐きながらその熱を吐き出そうとする。
 しかしそんなものでどうにかなるはずもなく。
 むしろ口を開けたせいで先ほどよりもはっきりとした甘い嬌声が口から漏れ出す始末だ。
 熱くて、苦しくて。
 でも気持ち良くて、たまらない。
 自慰の時とは比べ物にならない快感だ。
 そしてギーヴは、アルスラーンが待ってと言いつつも感じ入っている様子を見て、動きを止める必要は無いと思っているのだろう。さらに刺激を加えてくるのに、あっという間に再び限界が近付いて来るのを感じる。
「っ、あ!はぁっ……ん、んん、きもちひっ、」
 陰茎の先端から根元まで何度も勢いよく出し挿れを繰り返されると、カリ首と竿に浮いている太い血管に前立腺をクニクニと舐めるように刺激されて淡い熱が腰全体に広がっていく。さらに不意に奥まで突き上げられると、瞬間的に射精感が下肢に広がるのだ。
 それに思わず媚びるように鼻を慣らしながら中の陰茎を締め付けると、背後から小さく息を飲む気配がする。
「そのように煽られて……っ」
 知りませんよと口にした時のギーヴの様子は、彼にしては珍しく余裕が無いようであった。
 その証拠に彼は性急な様子で腰に腕を巻きつけてきて動かないように固定すると、ガツンと勢いよく腰を打ち付けてくる。
「はっ、んぐっ!?」
 それからは、まるで嵐のようだ。
 達している最中にも関わらず、お構い無しといった様子でガンガンと腰を押し付けられて、これでもかと言わんばかりに亀頭で前立腺を責め立てられる。するとその度に下腹部を中心として身体全体に熱が広がる感覚が走り、息も絶え絶えの状態になってしまった。
「陛下、出さずに達していますよね、っ」
「~~ッッッ!!」
 そこで確認するようにグーッと一際深く腰を押し付けられ、最奥を有り得ないくらい強く抉られる感覚に全身をビクビクと痙攣させながら、額を寝台に擦り付けた。
 過ぎた快感がこんなにも苦しいものだとは。
 辛うじて目は開いているものの快感で曇った瞳には何も映っておらず、口からも意味の無い単音が漏れるだけだ。
 そしてそんなアルスラーンの様子を見たギーヴは、愛おしいといった様子でその頬を指先で撫でた。
 だがそれもほんの一瞬のことだ。再びアルスラーンを抱え込むような格好になると、何度も何度も腰を打ち付けて最奥にある結腸の入口を亀頭で責め立ててくる。さらにはそこに先端をグッと押し付けられ、亀頭の先がその中に少しだけ潜り込んだところで熱い液体をその中にたっぷりと注ぎ込まれた。
「あ、ああ……なか、出て、っ」
「はぁっ……分かります?」
 全部、ちゃんと飲んでくださいと言われると、腹を思わせぶりに指先でゆっくりと辿られる。
 それから余韻を楽しむようにゆるゆると陰茎を出し挿れされ、そこでアルスラーンの意識は飛んだのか。以降の記憶は曖昧だ。

 とにもかくにも、アルスラーンの初めてはそんな調子でとんでもないものであった。
 そしてトんでしまうくらい気持ち良い体験に、年若い青年が癖にならないはずがないだろう。
 それはギーヴも同じだったのか。それ以降彼が王都にいる間、二人は頻繁に身体の関係を持つようになった。
 普通に考えて、そんな頻繁に逢瀬を重ねていては、周りの者に気付かれるのではないかと思うかもしれない。しかしギーヴは夜中に露台からフラリと部屋の中に入りこんでくるのがほとんどだったので、意外にも二人の関係を怪しむ者はいなかった。


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