アイル

二人の臣下は我慢出来ない-2(R18)

 それからのギーヴの行動は早かった。
 半分ほど残っていた麦酒をあおるようにして一気に飲み干すと、テーブルの上に代金を置いてからさっさと店の外に出る。そして早足で王宮へ向かい、衛兵の目を盗んでアルスラーンの部屋の露台へ降り立った。
「失礼いたします――……と、もう寝ているか」
 部屋の中はすでに真っ暗だ。さらに寝台が膨らんでいたので薄々そうかもしれないと思ったが案の定だ。念のために小声で話しかけてみたが、寝台の膨らみの規則的な上下の動きが変わることは無かったのに、ギーヴは小さく苦笑を零した。
「おやおや……随分と無防備だ」
 目の前に夜這いをしに来た男がいるというのに。アルスラーンはそんなにまるで気付いていない様子ですやすやと眠っているので、やる気満々で来たギーヴとしては少々肩透かし感がある。
 そして寝台に歩み寄ってその安らかな寝顔を見ていると、自然とその気持ちも霧散してくる……かとも思ったのだが、実際にはその逆だ。
 アルスラーンは顔だけ出して布にくるまっているせいか、頬がほんのりと上気している。そこに指先をそっと這わせると甘えるようにすり寄ってきて、薄く開いた唇から熱っぽい息を小さく吐く。
「――っ、」
 その瞬間ギーヴは脳内で何かがプチリと切れる音がしたのを感じるのとほぼ同時に、無意識に唇を舌でペロリと舐め上げた。
 それから寝台の中へ自らの身体を滑りこませると、アルスラーンの身体を背後から抱きかかえる格好になる。さらに腿の中程に指先を添えると、そこから足の付け根にかけてをゆっくりと指先で辿った。

「意外に起きないものだな」
 しばらく様子を伺うようにアルスラーンの足を思わせぶりに触れていたが、多少寝息が乱れる程度で起きそうな気配は無い。
 それならばと裾の長い上衣をたくし上げて服の中に手を侵入させると、胸元に手を這わせてささやかな膨らみを優しく揉み上げる。するとそこでようやく、アルスラーンははっきりとした甘い吐息を漏らした。
「ふっ、う、ぅぅ」
「ふむ……こちらの方も大分感度が良くなってきたか」
 もちろんアルスラーンは男なので、女性のようなはっきりとした胸の膨らみは無い。しかし日々政務に追われながらも何だかんだときちんと剣術の稽古をしているおかげで、そこはちょうど手の中におさまりきる程度のほどよい筋肉の膨らみが有った。
 そしてギーヴとダリューンの二人で散々刺激を加えていたおかげか、先端の乳首は一年前よりも明らかに大きく肥大していた。
 正直――
(かなり、そそられる光景だな)
 ギーヴは肩口に顎を乗せて胸元を覗きこむ格好になると、先端に指先を添えて押し潰すように刺激を加えてやる。
 するとアルスラーンは指先が突然はっきりとした意思を持って動きだしたのに驚いたのか。鼻を小さく鳴らしながら背中を丸めて逃げようとした。
 しかし背後にはギーヴがいるのでそれが叶うことは無く。むしろギーヴの下肢に尻を押し当てる格好になってしまったことで、自らをさらに追いこんでいるようであった。
 そしてそんな風にされたら、ギーヴも黙っているはずが無いだろう。
 胸の先端に指先を添えたまま上体を抱え込むと、今度は逆に腰を押し付けて双丘の狭間に熱の塊を擦り付けるように動かしてやる。
 ついでに乳首を摘んで引っ張りながら、今度は尻の孔に狙いをつけてゴリゴリと亀頭を押し付けると、はっきりとした甘い声を上げながら面白いくらいに下肢を震わせたのにギーヴは口元に笑みを浮かべた。
「ん、あ、ああ……っ!」
「おや……随分と良い反応だ」
 むにゃむにゃと寝惚けて何か言っているようだったので顔を覗きこんでみるが、瞼は依然として閉じたままなので完全に起きたというわけでは無いらしい。
 それならと胸元に添えていた手を下肢まで這わせて下着をずり下ろすと、予想通り。ねっとりした感覚が指先に触れたのに目を細めた。
「こんな程度の刺激で達するとはな」
 少々意外だ。しかし今まではほぼ毎日のように精液を空っぽにさせられていたのが、いきなり一週間に一度になってしまったのでアルスラーンも少しばかりたまっていたのかもしれない。
 やはり週に一度というのは陛下にとっても良く無いなと自分勝手なことを考えつつ、自身の下衣の前を緩めて固く勃起した陰茎を取り出す。そして尻の孔に先走りを塗り付けるように亀頭を何度も擦りつけている途中で、先端がヌルリと滑って孔の中心に潜り込んでしまったのに小さく息を飲んだ。
「は、っ――……このまま、挿りそうだな」
 普通だったら有り得ないが、これも日々ギーヴ達が尻の孔を掘っているおかげだろう。ゆっくり挿入する分には問題無さそうだ。
 しかし尻の孔は勝手に濡れる訳では無いので、動くとなると滑りが圧倒的に足りない。したがって腕を伸ばして寝台脇の引き出しから潤滑油を取り出し、自身の竿部分にたっぷりと塗り付ける。
 それから様子を伺うように数回亀頭を前後させた後、一気に根元まで挿入し――
 瞬間的に腰に広がった熱の感覚に、アルスラーンはそれまでの夢見心地な気分から完全に意識を覚醒させると、慌てて手足をバタつかせた。



「ふ、あ、ああ――ッッ!う、えっ?な、んだ、これはっ!?」
「ああ、お目覚めですか?」
「ギーヴっ!?」
 アルスラーンも年頃の青年なので、時々いやらしい夢を見る。だから今回もそうなのだろうと思っていたが、全て夢では無く現実だったのだ。
 まさかの状況に気が動転して、咄嗟に逃げようとするのは当然だろう。
 だがギーヴはそんなのお見通しだと言わんばかりに素早く腰に腕を回してそれを阻止し、さらにはそれを咎めるように引き寄せる。そして耳元に唇を近付けてお逃げにならないでくださいませと囁いてくるのだ。
 挙句に奥に先端を押し当てた状態で、円を描くように腰を動かしてくるのでたまったものではない。
「なんで、こんな……っ!う、うう、あ」
 アルスラーンは少し前にダリューンから、こういった行為は今後一週間に一度だけとするということ。そして今週の順番はダリューンであると聞かされていた。
 だから何故ギーヴがこの場にいるのか、さっぱり訳が分からない。
 ただ急激に二人との行為の回数が減って少々物足りなく感じていたのも事実で、奥の気持ち良い場所をクニクニと舐めるように刺激されると、細かいことはだんだんとどうでも良くなっていく。
 そして結局疑問の言葉も快感に霧散すると、両手を寝台の上に置いて自ら押し付けるように腰を動かしていた。

 だが世の中そうは上手くいかないものなのである。
 その数秒後に寝室の扉がいきなり開かれたのに、アルスラーンは寝台の中に慌てて潜り込む。しかしその拍子にギーヴの陰茎が奥にはまりこんでしまい、その甘い感覚に悩ましい声を上げながら身をくねらせた。
「陛下っ!いかがなされました――ギーヴ、おぬしが何故ここに!?」
「――ッ!?ふ、あ、あああっ、ぅ、うう、」
 この声はダリューンで間違い無いだろう。聞き慣れた低音の声が、不機嫌な様子で約束と違うではないかとギーヴに文句を言っているのが聞こえてくる。
 ただし肝心なギーヴの方はというと、まるで反省している様子は無い。それどころか、自分の方が王都を空ける期間が長いのだから、ダリューンの倍は機会を与えられて然るべきだと平然とした様子で己の主張を口にしていた。
 しかもその最中も腰の動きは止まることなく、アルスラーンを苛んでいるのである。
 さらには何を考えているのか。ギーヴは唐突に仰向けの格好になり、アルスラーンの身体は反転して向かい合う格好になるように自らの上体に乗せると、下肢にかかっていた布を上に手繰り寄せて結合部をダリューンから見える状態にする。そしてその状態で、腰を上下にゆさゆさと揺らしてくるのだ。
「う、ぐっ!?いきなり動くの、や……あ、ああっ!」
「そんな嘘をおっしゃって。陛下は奥をこうやって突かれるのがお好きでは無いですか。前もこんなに涎を垂らしていらっしゃる」
 ほらと言わんばかりに、不意に先端でクッと押し上げられるともう駄目だ。途端に理性がドロリと蕩けてしまうと、アルスラーンは思ったことを素直に口にしてしまう。
「はっ……あ!ん、んんっ、きもち、ひ、よぉっ……ね、もっと、おく」
「――だ、そうだ。ダリューン卿も一緒にどうだ?」
「おぬし……っ!」
 そこでギーヴは口元に弧を描くと、結合部を見せつけるようにアルスラーンの双丘を左右にパクリと割り開きながら腰を動かす。
 それを目の前で見たダリューンは、奥歯を噛みしめながら内なる衝動と戦っているような表情をするものの、誘惑に耐えられたのはほんの数秒のことだ。
 ギーヴの目線を辿るように振り返ったアルスラーンと視線が合うと、花に吸い寄せられる蜂のように腕を伸ばしていた。

「もう一本くらいなら挿るだろうか」
 そう口にしたのは、意外にもダリューンであった。
 常であればそんなことを口にすることは絶対に無かっただろう。しかし今の彼は結合部に指を這わせており、そこに少し力を加えるだけで指先を簡単に飲み込んでいく光景に釘付けになっていた。
 そして肝心なアルスラーンはというと、先ほどからギーヴが肩透かしな快感しか与えてくれないのに完全に欲求不満状態となっていたので、ギーヴからダリューンがこのまま挿入したいそうですよと言われても、まともに考えられるはずも無く。とりあえず何でも良いから早くこの状態から脱却したいのにコクコクと頷いていた。
 すると背中にダリューンが覆いかぶさってきて、身体を二人に挟み込まれるような格好になる。そこでようやく何かがおかしいことに気が付くと、顔を上げてギーヴとダリューンの顔を交互に見た。
「あ、え?」
 いつもは片一方の人間に仰向けかうつ伏せの格好で挿入され、残りの人物に口に突っ込まれるのが常なのでこんな体勢になったのは初めてだ。
 そのせいか、何となく嫌な予感がする。
 しかし体勢を変えようにも、すでに尻の孔にはギーヴの陰茎がズッポリと埋め込まれている状態なので、今さらどうしようもない。
 そんなわけで結局そのままの格好で不安げに視線を彷徨わせていると、それまで尻の孔を思わせぶりに弄っていたダリューンの指の動きがピタリと止まる。そして既に挿入されているギーヴの陰茎を下側に押し、孔の縁部分に出来た小さな空間に己の亀頭を押し当ててきたのにアルスラーンは目を大きく見開いた。
「失礼いたします」
「ま、待て、まさか、それは――ッ、ひ、ぐっ!?」
 まさかそんな、二本も挿るわけがないと思うのに。
 グッと腰を押し付けられると孔が陰茎の形に沿って拡がり、思ったよりも呆気なく一番太いカリ部分を飲み込んでしまう。そしてそこさえ挿ってしまえば、あとは呆気ないものだ。
 ダリューンの陰茎が奥へ奥へと侵入してきて、ついにはギーヴと同じく最奥まで到達したのか。トンと奥を突かれた次の瞬間、背中から脳天まで電流のようなゾクゾクとした快感が一気に走り抜けていき、気が付いた時には自身の陰茎から白い液体を大量に漏らしてしまっていた。
「あ、ああぁっ!?ふ、えっ……出ちゃっ、」
 下肢に走った覚えのある解放感に慌てて指を添えるものの、それで精液の放出が止まるはずもない。
 たださすがに羞恥心に耐えかねて目の前にあるギーヴの胸元に額を擦り寄せて顔を隠すと、宥めるようにゆっくりと後頭部を撫でられる。しかしそれに癒されたのもほんの少しの間のことだ。
 直後、頭に添えられていた手が背中を辿ってスルスルと下肢におりてきたのに顔を上げると、ギーヴは目が合ったところでニコリと微笑む。しかしその笑顔に反して口から出てきた言葉は、動きますねという絶望的なものであった。

「も、だめっ……はっ、はぁっ、」
 二人ともその体躯に見合った大きさの陰茎を持っている。だからいつも一人分だけでも一杯一杯なのに。
 それを二人分も銜えこまされている淫筒は今まで経験したことが無いくらい拡がり、なおかつその中をみっちりと埋められている感覚に息をするのもままならない。
 しかもその状態で二人とも好き勝手に腰を動かして、奥をゴツゴツと刺激してくるのだ。
 これはたまらないと早々に泣きを入れて腰を前に逃がそうとするのは、まあ当然のことだろう。
 しかし案の定と言うべきか。ダリューンにすぐに気付かれてしまって両手で腰をおさえられると、逃げようとしたのを咎めるように結腸の入口に先端をプチュリとくっ付けた状態でぐーっと腰を押し付けられる。
 さらにそんな時に限ってギーヴもズボリと奥まで挿入してくると、ダリューンの動きに合わせるように腰を押し当ててくるのだ。
「それ、まずっ……――か、はッッ!?」
 瞬間的に下腹部に広がる熱に、たまらず背中をのけ反らしながら伸び上がる。しかしそれでどうにかなるはずも無く、下肢をブルブルと震わせながら透明な液体をビシャリと勢いよく溢れさせてしまう。
 そしてそんな風に潮を漏らしながら達した瞬間に内壁が窄まったのか。二人は狭まった淫筒を割り開くようにゴリゴリと好き勝手に腰を動かした後、最奥に叩き付けるように熱い液体を放出した。

「あー……二人だと少々動き辛い難点はあるが、これはこれで悪く無いな。ダリューン、悪いが陛下の中に出した物を掻きだすのを頼んでもよいか」
「分かった」
 それから少しの間意識が飛んだ状態だったらしい。
 ギーヴとダリューンの話し声が聞こえてくるのと同時に意識が浮上するのを感じて瞼を開けると、二本の陰茎が引き抜かれたところであった。
 それにホッと胸を撫で下ろすものの、すぐにギーヴの腕が伸びてきて双丘を再び割り開かれる。すると普段よりも大きく拡がっていたせいでまだ閉じきっていない口から、中に出された二人分の精液がブチュリと破裂音を響かせながら溢れてきた。
「う、えっ……それ、やあっ」
 先ほどの会話から察するに、恐らく二人は中に出した精液を掻きだそうとしてくれているのだろう。ただ達した後にそれをやられるのは、中途半端に復活した理性がチクチクと羞恥心を刺激するのでいたたまれないことこの上ないのだ。
 したがって毎度のごとく自分でやるからと言って上にずり上がろうと手を伸ばすものの、背後から伸びてきたダリューンの手によって絡め取られてしまう。
 そして少しの間ご辛抱くださいと優しい声音で告げられ、常よりも緩んだ状態の尻の孔にズブズブと三本の指の束を埋められてしまった。
「う、ううー……奥は、だめだっ」
 ただでさえダリューンの指は太い。そんな指の束を根元まで挿入されると、本物の陰茎に貫かれているような圧迫感に頭が勘違いしてしまいそうになる。しかも今は達した直後で内壁が敏感になっているのだ。
 だからもう勘弁して欲しいと必死に訴えるが、そんなのお構い無しといった様子で内壁を優しく撫でるように出し挿れされるともう駄目だ。
「ふっ、う!あ、ああっ!」
 これはもう後処理だと分かっているのに。はっきりと感じているのが分かる嬌声を上げながら、内壁をきゅうと窄めてしまう。
 そして下肢に広がる快感にたまらず目の前の身体に抱き付きながらその首筋に頬をすり寄せると、耳元でギーヴがクスリと笑う声が聞こえてきた。
「下の口が随分とひくついていらっしゃるご様子。先ほどの挿入だけでは足りなかったですか?」
 ほらと言いながら、尻の孔の縁部分にたまっていた精液を指先で塗り広げられると、甘えるように喉が鳴ってしまうのが止まらない。
 それを合図とするかのように、ダリューンの指が引き抜かれて。中に出された精液を漏らしながらだらしなく口を開いている尻の孔に、今度はダリューンの陰茎をあてがわれる。
 そしてそれに気が付いてゴクリと喉を鳴らした次の瞬間には根元まで一気に埋め込まれ、それからは結腸の入口を先端で散々こねくり回され、中でイかされまくっていた。
 ちなみにその最中アルスラーンを抱えていたギーヴが黙ってその光景を見ているはずもなく、口付けをしたり、胸元にちょっかいを出していたのは言うまでもない。そして最終的にはギーヴにも陰茎を突っ込まれ、いつものように二人共に順々に犯されていた。



『それで、何故ダリューンは陛下の部屋の前にいたのだ』
『今晩は宿直で、偶然部屋の前を通っただけにすぎぬ』
『はあ……偶然。随分とまあ、ちょうど良い時機に居合わせたものだなあ』
『何が言いたい』
『いや?』
「う……何事だ」
 事が終わるとアルスラーンはさすがに意識を飛ばしてしまったのか、身を清められた状態で寝台の上に寝かされていた。いつもは大体そのまま眠ってしまい、気が付いたら翌朝である。
 だが今日は何やら騒がしいのに再び目を開け、しかし声の主であるダリューンとギーヴの姿は見当たらないのを不思議に思いつつ寝室の扉に近付くと、予想通り。二人の会話が扉の向こう側から聞こえてきた。
『俺のことよりも問題はおぬしだ。週に一度と決めたであろう』
『確かにな。しかし先ほどダリューン卿も陛下に手を出されていたではないか。ということは、その時点で俺を糾弾する権利が無くなったということだと思うのだが』
『ギーヴ、おぬし……っ!』
 アルスラーンはまだ半分寝ぼけていたので、内容はよく分かっていない。ただ自分のことで揉めているらしいということは分かったので、気分が沈むのを感じた。
「ああ、何ということだ」
 仲間同士が言い争うなんて、悲しくてたまらない。
 したがって居ても立っても居られず扉を開けると、二人の視線が自分に集まるのを感じる。
 そしてそこで一言。二人が揉めるのならば、閨事はしばらく止めようと悲しい表情で告げると、二人は面白いくらいに狼狽えた。


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