「……はあ……」
昨日の夜は結局あれから兵長に後ろを散々弄られてもう一回イかされた。
再び入れられはしなかったが、昨日から出しまくったせいでこっちはヘトヘトだ。当分前からは何も出てこない気がする。
「朝から辛気臭いな。しゃんとしろ。」
翌朝、朝食を食べに行かねばと食堂に向かう廊下を腰を庇いながらヨロヨロと歩いていると、前を歩いている兵長に早速お小言を言われた。
オレがこんなハメに陥っているのは兵長のせいなのに、と恨みがましい目で見たらチラリとこちらを見て鼻で笑われる。
(――まあ、兵長も口ではこんなこと言ってるけど……)
でも、歩くスピードなんかはいつもよりゆっくりだし、一応こちらに気を使ってくれているらしい。
何となくくすぐったい気分になる。
それに、口では色々と文句を言ってはいるが、求められるのはそう悪い気分ではない。
(……兵長の事、す……好き、だし、な。)
いまさらになって、兵長と両想いになったという実感が湧いてくる。
「やあ、おはよう!身体の調子はどう?」
兵長と連れ立って食堂に入ると、朝からハイテンションなハンジさんに早速話かけられた。
兵長は面倒事に巻き込まれたくないのか、軽く返事をするとさっさといつもの定位置に歩いて行ってしまうのはいつものことだ。これは完璧にハンジさんの相手はお前がしろという態度だ。
「はあ……」
「ん?どうかした?」
思わずため息を吐くと、ハンジさんがオレの顔を覗き込んでくる。
「あ、い、いえ!!身体の方はおかげさまで何とも……」
「ホント?なら良かったよ。どこか調子悪いところあったら言ってね。医務室より良い薬持ってるからさ。」
そういうと、バシバシと肩を叩かれた。
気持ちは嬉しい……が、腰に響くので叩くのは止めて欲しい。
それはともかく……今のハンジさんの言葉に何か違和感がするのは気のせいだろうか。
(ハンジさん、今身体の調子って……言った、よな?……何でそんなこといきなり聞いてきたんだ?)
身体の調子について聞いてきたということは、つまり……身体の調子が悪くなりそうな昨夜や今朝のあれやこれやのことを知っているということだろうか。
まさか、という思いでギギギと音が鳴りそうなくらいゆっくりとハンジさんの方を見ると相変わらず満面の笑みだ。
「……。」
ひとまず、自分から地雷を踏みに行くこともないだろうと無理矢理思い直し、今の内容の真意について聞くのは避けることにするのが無難だろう。
「えーと……ハンジさんも朝食これからですか?」
「ああ、うん。良ければ一緒にどう?」
「オレは構いませんが、兵長は――ッ」
チラリと兵長の方を見るとすでにいつもの場所に座っており、何故か物凄い目でこちらを睨んでいる。
「ああ、大丈夫大丈夫。私はリヴァイと一緒に席取っておくからさ、エレンは食事持って来てくれないかな。」
「えっ?あ、はい。」
ハンジさんは踵を返すと兵長の方に歩いて行ってしまった。
……本当に大丈夫なのだろうか。
少し心配だ。
「少しくらい私に感謝してくれたって良いじゃないか。」
「煩い。」
三人分の食事を配膳台から運び終わると、ハンジさんが兵長の横に座っていつものように絡んでいる。
予想通り兵長は物凄く不機嫌そうだ。
「えっと……どうかしたんですか?」
「リヴァイとエレンの件だよ。私が恋のキューピットになってあげたのにこの扱い!ああ、酷い!」
ハンジさんは相変わらず大げさな感情表現で物凄く胡散臭い。
「……恋のキューピット?」
「そう、そうだよ!エレンのことお持ち帰りできるように昨日あんなにセッティングしてあげたのに!」
「頼んでねえ。」
「またそういうこと言う!内心じゃちょっとラッキーって思ってたくせに!」
(セッティング……?)
そういえばハンジさんの部屋で片付けの手伝いをしていたときに、セッティングがどうこうという話をしていたのを思い出す。
(ということは、まさか昨日のお酒で酔った一件とかは……まさかハンジさんが仕組んだ……?)
恐る恐る兵長の方を見たら真顔で見返される。
「お前、気が付いてなかったのか。まあ、酒には今後気を付けるんだな。」
「えっ。」
ああ……。
オレは、どうやら大人たちの手のひらの上で踊っていたらしい。
呆然とした顔をしていたら、兵長が肩をすくめてほんの少しだけ苦笑した。
「――っ!」
兵長が……笑った……!
「なになに~?朝から顔赤くしちゃってやらしいな~」
「なっ、ハンジさん!?そ、そんなんじゃ……!」
――今日も騒がしい一日になりそうだ。
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