アイル

舞踏会の嗜み-1(R18)

(中略)
「……約束を破ったら仕置きをしねぇとなぁ?」
「……。」
 額から指を退かされるとジリジリと身体の距離を詰められ、再び柵の方に追いやられる。背中に兵長が密着してきて、服越しに伝わる体温で温かいはずなのに冷や汗が背中を伝う。
 まさかこんな誰が来るかも分からない場所でと思うが……チラリと兵長の方を見ると、口元はニヤリとしているが目は笑っていない。
 普通なら有り得ないと思うが、今までの経験上兵長なら本当にここでヤりかねない。
「な、中に団長とハンジさんが居ますよ?兵長も一応顔を出しておいた方が良くないですか?」
「心配しなくてもさっき話して来た。」
「――ッ、ひ!」
 こっちに集中しろというように後ろから首筋をベロリと舐め上げられて思わずおかしな声を上げてしまう。
(中に人がいるのに……!)
 一度部屋の中の様子が気になると、そればかりが頭の中でグルグルと回って止まらない。
「まずい、ですよ……ッ、ぁ」
「そろそろダンスが始まってる頃合いだろ。誰もこっちなんて気にしねえよ。」
 オレは相変わらず手にグラスを持ったままなので、ろくに反抗出来ない。それを良いことに兵長はやりたい放題だ。
 先程のように背中から覆いかぶさるような体勢になると、身体の両脇から腕を回されて柵と腕の中に囲われるような格好になってドキリとする。
 さっきは本気で嫌だと思っていたのに……相手が兵長というだけでろくに抵抗出来ない。
「ひぅっ!」
 首筋の襟で隠れるか隠れないかという微妙な位置を彷徨っていた唇が吸い付いてきて甲高い声が口から漏れる。しかしさすがにこの場所でこれ以上の声を出すのは不味いので慌てて空いている方の手で口を塞いで声を必死に抑える。
 もう片方の手は相変わらずグラスを持っているので、これで両手が塞がってしまったわけだがこの際仕方ないだろう。大きい声を出して万が一中の人に聞かれるよりは断然マシだ。
「お前もつくづく馬鹿な奴だな。大体、酒なんて飲んでるからいざって時にろくに抵抗も出来ねぇんだよ。お前はいつもどっかが抜けていやがる。」
「ッ、う……はぁっ」
 首筋を舐めたり齧ったりを繰り返され、それから逃げるように両肘を柵の上について上半身を倒す。しかし兵長は逃がす気が無いのかそのまま追いかけるように上体を倒して刺激を続けてくる。
 別に下肢を弄られている訳でも無いしこの位どうってことないはずなのに、考えないようにしようとすればするほど意識が集中して過敏に反応してしまう。
(ッ……、ここは我慢だ。)
 このまま何とかやり過ごすしかない。
「どこまでそのやせ我慢が持つか、根競べだな。」
「なん、でこんな……ッ、あ!」
「そうだな……まあ、俺もさっき少し酒を飲んで気分が良いからな。」
「へっ?」
 兵長は飲んでも基本的には顔に出ないタイプなので全く気が付かなかった。
 ここに来る前にエルヴィン団長とハンジさんに会ったと言っていたので、その時に少し飲んだのかもしれない。
(でもある意味納得っていうか……)
 道理で……妙に手が早いわけだ。
 つい先ほど、わざと顔を見せないで自分にちょっかいを出して来た理由もこれで何となく察しが付く。
 普段の兵長は、そういうおふざけのような行為を余りして来ないので少し不思議に思っていたのだ。
 自分は夜風に当たっていたおかげで、力はまだ思うように入らないものの酔いの方は大分醒めてきたが、酒をのむなとオレに散々言っていた兵長本人が、どうやら酔っ払ってこの惨状ということらしい。


 兵長はオレが感じて声を上げてしまうのを必死に我慢するのを嘲笑うように、唇をずらして更に刺激を加えてくる。
 オレの感じるポイントは全て把握されているので、そこを狙ってジュルリと大げさな音を立てながら舐めたり噛んだりを繰り返されと、その度に面白い位にビクリと身体が跳ねてしまって恥ずかしい。
「んぅ――!」
 口元を手で覆っているので何とか声は出さないで済んでいるが、それでも無意識に喉が鳴ってしまうのだけは止められない。
 上着の隙間から手を差し込まれるとシャツの上から胸の突起を探り当てられ、既にプクリと固く勃ち上がっている先端をその感触を確かめるように上下に撫でられるともう駄目だ。
 もどかしい刺激に、指の隙間から熱い吐息が零れてしまう。
「乗り気じゃ無さそうだった割には……こっちはもう勃ってるじゃねえか。」
「――ひうッ!う、グッ……い、たい、です……ッん、んんっ!」
 布越しの刺激だと油断していたところをギリと強い力で胸の先端を摘まれ、さらに前方に思い切り引っ張られると思わず悲鳴のような声が漏れる。
「その割には、良さそうに見えるけどな。」
 ほらというように繰り返し胸に刺激を加えられて、ギュウギュウと先端を押し潰されると何故か全く関係無いはずの下肢が疼いてそちらも勃ち上がってくるのは何故だろう。
 痛いのは確かなのに言い返すことが出来ない。
「ん……ふ、んんッ…!」
 先端を摘んだ状態で引っ張られ、時折慰めるように胸全体を揉まれると快感でだんだん目に涙の膜が張ってくる。
 気持ち良い。たまらない。
 一度声が漏れだすともう駄目だ。次々と押し殺したような喘ぎ声が指の隙間から零れていく。
 しかもそれだけではない。
(も、っと……ほし……ッ)
 そうやって自分からゆすりそうになってしまう。
 最初の頃は胸元への刺激なんてくすぐったいばかりだったのに、いつの間にかシャツ越しの焦れったい刺激でもこんなに感じるようになってしまった。
 こんなでは無かったのに。

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