アイル

訓練兵エレンと兵士長リヴァイ-6(R18)

 ――オレは今、奇妙な夢を見ている。
 ごくごくたまに夢の中の自分を客観的に見ている自分が別に存在しているのをフとしたきっかけに認識することがあり、その瞬間に『これは夢だ』と分かることがある。
 そしてエレンにとっては、今がまさにその瞬間だ。

 たしか最初は兵長に怒られて蹴りを入れらていた。そして頬をグニグニつねられて……ここまではまあ昼間の訓練で散々怒られた名残だろうなと思う。
 しかし今、兵長に首元と胸元を弄られているのは一体何故なのだろうか。
 しかも最初はただくすぐったいだけだったのに、余りに執拗に弄られているせいか触れられる度に背筋にぞくりとした感覚が走って、明らかに危ない方向に進んでいる気がする。
(たしか……夢って願望とかなんだっけ?)
 そんな話をどこかで聞いたことがある。
 となると今見ているこの夢は……自分の願望なのだろうか。
 いつの間にかシャツを胸元まで捲り上げられて、身体の線を辿るように指を這わせられると身体が震えるなんてまるで恋人同士がそういうことをしている時みたいだ。
 もちろんそんな経験なんてしたことが無いので妄想にすぎないが、夢の中にも関わらず細部まで妙にリアルで我ながら感心する。
 しかし相手があのリヴァイ兵長となると話は別だ。
(つまりこれは……やっぱりオレはそういう意味で兵長のことを好きってことなのか?)
 自分の概念では男は女と恋愛して結婚するものだ。
 だから男同士なんて有り得ないと思うのに、兵長にこんなことされても嫌だと思うどころか、その手によって与えられる刺激に感じてしまっている。
 そしてそのせいか、どこかで自分が兵長のことを好きらしいという事実を納得している自分がいるのだ。
 少し前まで好きじゃなくて尊敬だとか言い張っていたくせにと自分でも思わなくもないが、こうも目の前に現実を突きつけられたら誰だってそう思うだろう。
(――好き、なのか。)
 こうやって改めて自覚すると、何とも言えず恥ずかしい気持ちがこみ上げてきて自然と顔が赤くなるのが自分でも分かる。どうせ夢の中だし、兵長に見られたって構わないが、それでもやっぱり恥ずかしくて思わず腕で目元を隠してしまうのは許して欲しい。
 どうせなら、調査兵団での訓練が全て終わってからこの想いに気付きたかった。自分は一体……どんな顔をして明日の朝に兵長と顔を合わせれば良いのだろう。
 寝て起きたら、いつものように夢の内容を全て忘れてしまうことを願うしか今は出来ない。
「お前、起きてんのか?」
「……っ、え?」
 目元を腕で隠しながら与えられる刺激に荒い息を吐きながら耐えていると、兵長がいきなり話しかけてきてびっくりする。
 何かが、おかしい。
(起きてんのか?って……)
 これは全て夢の中の話しだ。
 その夢の中の登場人物が、わざわざオレに起きているかどうかを確認してきたことに激しい違和感を覚える。
「起きてんならそう言え。」
「ぅ、あっ!?ちょっ……ま、っ――ひゃぅっ!?」
 嫌な予感に恐る恐る目元の腕を退けて自分の胸元の方に目を向けると、兵長が口を開いてその隙間から舌を出し、胸の先端をベロリと舐め上げているのが見える。
 そこはオレが寝ぼけている間に散々弄られたせいで敏感になっているのか、舌で舐められるとくすぐったいような快感が湧き上がって思わず首を竦めてしまう。
 これは――夢じゃ、ない。
 余りに非現実的すぎる光景に夢だと思いたいが、霞みがかっていた意識が一気に覚醒してとりあえず今起こっていることは全て現実らしいと理解する。
 しかしこれは一体どういうことなのだろうか。
 兵長はそもそも男に興味が有りそうな人には到底見えないし、こんなことをいきなりやってくるような人にももちろん見えない。
 自分は兵長が好きらしい……ので、こういう状況が嫌だと言ったらウソになるが、現実に襲われかかっているとなったら話しは全く別だ。
(――そういえば……もしかして、寝る前飲んだアレのせいか!?)
 寝る前に誤って飲んでしまったピンク色の怪しげな液体のことを思い出す。
 正直いうと、あの薬の効果については眉唾程度に思っていたのだが……まさか本当にこんなことになるとは夢にも思わなかった。
 にわかには信じがたいが、あの兵長が自分を好きなんてまず有り得ないし、となるとこんなことになった原因はあの薬のせいだとしか思えない。
 よく分からないが、今更のように効果を発揮したのだろうか。
「へっ……兵長!その、や、止めましょう!?これ、ハンジ分隊長の薬のせいですよ!」
「……ハンジ?」
 これ以上胸とか首筋とかを怪しい手つきで触れられたら下半身的な意味でたまったものじゃないので、オレは馬乗りになっている兵長の胸元をグイと押す。
「オレ、寝る前にハンジ分隊長に渡された薬みたいなの飲んじゃったじゃないですか。」
「ああ……そういえばそんなこと言ってたな。」
「だ、だから、兵長は今ちょっとおかしくなっちゃってるんですよ。だから、その、正気に戻って――」
「――ってことは、お前、俺のこと好きなのか。」
「は、はいっ?」
 いきなりこの人は何を言い出すのだろうか。
 それはまあ……確かに兵長のことが好きなのは事実だが、何故いきなりその話が出てくるのか訳が分からず思わず間抜けな返答をしてしまう。
 寝ぼけて好きと言ったりは……していないはずだ。
 それじゃあ、オレの態度があからさますぎてバレたのだろうかとも思ったが、その割には兵長の表情は妙に自信ありげでやはり違う気がする。
「い、いきなり何言い出すんですか。心臓に悪い冗談はやめてくださいよ。」
「……お前、やっぱり馬鹿だな。さっき自分で言ってたじゃねぇか。あの薬の効果は『片思いの相手が自分に興味を持ってくれること』だってな。だったら、そういうことだろ。」
「――ッ!!」
 『好きなのか』と聞かれて『そんなわけ無い』と否定するのが一番スマートなのかもしれないが、さすがに好きな人相手に咄嗟にそう言えるほど神経は図太く出来ていないので適当に誤魔化そうとすると、思わぬ切り返しを食らって固まる。
 そういえばうっかりしていたが、兵長の言う通りだ。これは完全に墓穴を掘ったとしかいいようがない。
 そもそもハンジ分隊長の薬のせいだと言った時点で、全ては兵長にバレバレだったのだ。本当に、我ながら間抜けすぎる。
「俺のことが好きなら何も問題無いだろ。まあ俺は元々男好きじゃないが、運が良いことに今はその気だしな。お前も運が良い奴だな。」
「ギャ――ッ、もごっ!」
「いきなり大声出すな。周りの連中が起きるだろうが。」
 ハンジ分隊長の薬の件を話したらすんなり止めてくれると思ったのに。
 おら、と言われるとぎゅむと反応しかけている下半身を握られて、思わず大声を出しかけたところを手で口を塞がれる。しかも午前中の時みたいに目の前に顔を寄せられているせいで、再び心臓がバクバクと脈打ちだしてしまう。
(勃ってきてるの、まだバレてないと思ってたのにっ――!)
 さっきから兵長に隠そうと思っていたことがことごとくバレて最悪だ。しかもついでというように下半身を掴んでいる手がソコを揉むように動き出して、ますます追い込まれてしまう。
 そんなことされたら、本当に止められなくなってしまう。
(でも……流されちゃ、ダメ、だ。)
「はっ……兵長、それ以上は、だめ、ですよっ……結婚、されるって……!」
 そうハンジ分隊長が昼間に言っていた。だから、これ以上は不味い。
 ギュッと目の前にある兵長の胸元を掴んで、必死に訴える。
 もし一時の気の迷いでオレとそういう関係になってしまったら、兵長だって後で絶対後悔するに決まっている。それにオレだって……期待してしまって諦めが付かなくなってしまう。
 だから絶対に、これ以上はダメなのだ。
「――は?お前今、誰が結婚って言った。」
「え?だから兵長が結婚されるって……ハンジ分隊長が……」
「あのクソメガネ……!」 
 この兵長の反応はまさか――
「もしかして結婚の話しって、単なる噂話だったんですか?」
「当たり前だ。恐らくお前をからかうのに適当に言っただけだろ。あの野郎……有ること無い事吹聴しやがって。明日本部に戻ったら覚えてろよ……」
(な、なんだ……そうだったのか。――って待て待て!なに普通にホッとしてんだオレ!?)
 兵長の結婚の話がウソだということは、それをネタに兵長にこの行為を止めてもらうのは無理なわけで。そうなったら、今のオレはどうやって兵長を止めれば良いのだろうか。
「そういうことだ。だから問題ねぇな。」
「うっ、ぐ。」
 そんな風に強気で来られたら、たとえこれが薬の効果によるものだとしても拒否出来るはずがない。
 自分はこういうのが全く初めての経験なので少なからず恐怖心はある。でも今の機会を逃したらもうこんなチャンス滅多に無いだろうし勿体無いとも思うのだ。
 はっきり言って、こんな考えズルイかもしれない。
 でもそんなズルイ手にすがりたくなるくらいには、オレは兵長に憧れていて……好きなのだ。
「……はっ……あ、ぅっ」
 ズボンと下着を引きずり下ろされると、寝ぼけている間に弄られていたせいで勃起してしまった陰茎を上下にゆるく擦られてその度に声が漏れてしまう。
 一応自分も年頃の男子なのでそれなりに自慰なんて物もやったことはある。しかし訓練兵団は集団生活なので友人にバレて恥ずかしい思いをする危険性を考えるとそんな頻繁にやれるはずもなく、まあ何回か……我慢出来ずにトイレの個室でやってしまったころがある程度だ。
 そんな調子なので、他人の手で弄られたらあっという間に限界ギリギリまで勃起してしまうのは致し方ないだろう。
「随分勃つの早いな。もうガチガチじゃねぇか。たまってたのか?」
「ひゃっ、う!ち、がっ――」
「違くねぇだろ?」
 先走りを敏感な亀頭に塗り広げるように刺激されて、ブルリと腰が震えてしまう。
 チラと目の前にいる兵長の顔を見ると、口角が上がっていてオレをからかっているのはほぼ間違いないだろう。この様子から察するに兵長はまだまだ余裕そうで、自分ばかりが追い詰められているみたいで恥ずかしい。
 それはまあ年齢だって一回り以上違うわけだし当然といえば当然なのだろうが、経験の違いを見せつけられているみたいなのが面白くなくてついプイと横を向いてしまう。
「何すねてんだよ。男なら誰だって触られたらこうなるもんだろ。ま、他の男のなんて触ったことねぇから知らないけどな。」
「ちょっ、それ、な、にっ!?」
 兵長はオレが横を向いた隙にこれ幸いと胸元に顔を寄せてくる。片方の胸の先端を口に含むとジュルリとそこを吸い上げられ、それと同時に陰茎の竿の部分を手の平で何度もこすり上げてきて、一気に射精感が高まってしまう。
 オレは男だし、胸なんて何も感じるはずが無い。
 しかしさっき散々弄られたせいでぷっくりと赤く膨らんだそこは感覚が鋭敏になってしまっているのだろうか。胸のゾクゾクとした曖昧な感覚と同時に下肢の快感が混じり合っておかしな気分になってくる。
 まるで胸でも感じるように教え込まれているみたいだ。
「――ほら、イけよ。」
「ま、まって――ッ、あ……や、ぁっん、ぐっ!!」
 胸元から口を外されると今度は指先で先端をギュッと摘まんで乳首を押し潰されて。痛いくらいの力加減でグニグニと押し潰すようにしながら陰茎の先端の孔を抉られると身体の奥深くから熱い液体が湧き上がってくる。
 このまま達してしまったら、兵長の手を汚してしまう。
 だからギュッと唇を噛んで何とか耐えようとするが、兵長はそれを嘲笑うように刺激を重ねてきて、あっと思った瞬間にはドロリとした液体が陰茎の先端から零れ落ちていた。
「はっ……はぁっ……」
 ――物凄い、体験をしてしまった。
 一気に大人の階段を上ってしまったいみたいなむずがゆい感覚に襲われる。
 他の人にやられるのが、こんなに気持ち良い物だと思わなかった。今までの自慰なんてまるでおままごととしか思えない。その証拠にいつもなら出す物を出したら一気に興奮が収まるのに、今はまるで熱が引かなくて荒い息を吐いて何とか身体を落ち着かせるだけで精一杯だ。
(そ、いえば……兵長の、手……)
 オレの精液で汚してしまったのだ。
「すみ、ません……手、汚してしまって。」
「別にそんなに気にするほどのことじゃねぇだろ。それより――」
 慌てて床に肘を付いて上体を起こしかけたところで、何故か両足の膝裏を掴まれて床に逆戻りしてしまう。
「え、っと……?」
 兵長に触れられた膝裏がベタベタして気持ち悪いのは自分の精液だと思うとかなり微妙な気分だが、今はそれよりも自分の格好の方が問題だ。
 何故オレは、兵長の目の前で両足を開いて股間をさらけ出すような間抜けな姿になっているのだろう。
 慌てて膝を閉じようとするが、足の間に兵長の身体が入り込んでいてそれも無理で。しかもオレが動けないのをこれ幸いと、両膝をさらにグイと押し広げられる有様だ。
「ちょ、へ、兵長!?」
「さっきから騒々しいヤツだな……お前が女役するってだけで、そんなに大騒ぎするほどのことじゃ無いだろうが。その年齢なら女と少しくらい経験あるだろ、それ思い出せ。」
「う、ええっ!?い、いや、そういう問題じゃな――ッ、う、あっ!?」
 その前に女の人と未経験な訳だが、羞恥心からそれを公言することも出来ずにあわあわしていると、ごりとオレの股の間に固い物を押し付けられて全身が硬直する。
 兵長からはそういう性的な物が連想出来なくて失念していたが、そういえば兵長は男で、オレと同じ物が股間にくっ付いているのだ。
(て、いうかっ……オレが女役って!?)
 ってことは、つまり、オレが兵長のアレを突っ込まれる役割なのだろう。
 いきなりの急展開に、正直頭がついて行かない。
 それはもちろん下心込みで兵長に言われるがままにこういうことになっている訳だが、オレが想像していたのはせいぜいちょっと弄り合って、運良くキスとか出来たらいいな……程度だったので余計にだ。
(まさか……本気なのか……?)
 思わずチラリと下の方を見ると、兵長がズボンの中から自身を取り出していてそこは既に固く勃ち上がっている。
 兵長のソレは自分の物よりカリが張っていて大きいせいか大人の物という感じがして、チクチクと自分のなけなしのプライドが刺激される。しかし、何だかひどく卑猥な物に見えるのはオレが兵長のことを好きなせいだろうか。
「……良いだろ?」
「ひ、ぁっ……!」
 思わずゴクリと喉を鳴らすと、陰嚢と後孔の間を思わせぶりに亀頭でこすられておかしな声が上がってしまう。
「なあ……エレン。」
 両手をオレの顔の左右につくと顔を耳元に近付けながら囁かれて、ゾクリとした感覚が背筋を這い登る。
 しかもその間も股の間を固い亀頭でグニグニと刺激されて……
 こんなのまるで、本当に挿れられているみたいだ。
 オレは首筋まで真っ赤になって、ただ頷くことしか出来なかった。


 オレは今、兵長に言われるがままに四つん這いの体勢になり尻の孔に数本の指を突っ込まれている。傍から見たら相当間抜けな格好だろうが、今はそんなことにかまけていられるほどの余裕は無い。
「だ、からっ……そこ、やぁ!」
「イイの間違いだろ。」
 後孔の入口から少し入ったところの内壁を指の腹で押されると、キュッと内壁が窄まって中の指を締め付けてしまう。
 最初は何となくムズムズするとかその程度だったのに、胸のときと同じように陰茎を弄られながらそこを押されてつい声を上げてしまったのが運の尽きだ。
 オレの反応に目敏く気付いた兵長が執拗にそこ弄りまわしてきたせいで、だんだんとはっきりとした快感にすり替わって今ではこの有様である。
「お前のここ、膨らんできてんの分かるか?おかげで分かりやすいな。たしかここは……前立腺とか言うんだっけか。」
「あっ……は、ぅっ!」
 いつの間にか本数を増やされた指先で、内壁の膨らみを挟み込まれてそこを押し潰すようにくにくにと弄られると、今は触れられていないはずの陰茎からトプリと先走りが溢れ出して床を汚してしまう。
 前の方ならともかく尻で感じているなんて有り得ないし、恥ずかしくてたまらない。だから別のことでも考えて身体の熱を飛ばそうとしているのだが、そんなオレを嘲笑うみたいに快感は強くなる一方だ。
「意外に、男も後ろで感じるもんなんだな。」
「んっ、んんっ……なか、広げるの、やぁっ!」
 中の指をくぱと広げられると入口が不自然に開いて、外の冷たい空気が中に入ってきて変な感じだ。
 しかしそう感じたのも束の間、指によってい少しだけ開いた入口に今度は熱い塊をグッと押し付けられて一瞬息をするのも忘れる。
 これは……間違い無く兵長の、アレだ。
 自分が女役だと宣言された時点でこうなるんだろうなぁということは、いくらこういう方面に疎い自分でも薄々想像はしていたが、いざこうやって尻の孔に兵長のモノを押し付けられると急に正気に戻ってダラリと冷や汗が垂れる。
「挿れるが、痛かったら言えよ。ああ……あと、なるべく声抑えろ。」
 ばさと何かが目の前に落ちて来たので何かと思ったら、団服の上着だ。これを投げられたということは……上着に顔を埋めるなりなんなりして、声を堪えていろということだろう。
 いまだに後孔に先端を押し付けられたままなので身体を大きく動かせないが、何とか片腕で上着を手繰り寄せる。
「……あ。」
 自分の上着かと思っていたが、よくよく見ると背中に縫い付けられている紋章は調査兵団の翼の紋章だった。ということは、これは間違い無く兵長の上着だ。
「どうした。」
「あ、いえ。これ、兵長の上着なんだって思って……」
「なんだそんなことか。お前のが良いなら――」
「い、いえ!大丈夫です。その……ありがとう、ございます。」
 兵長の上着を貸してくれたのはただの偶然かもしれない。でも、どうやら几帳面らしい兵長が自分の物を貸してくれたのが純粋に嬉しくて、思わずにへと笑ってしまう。少しくらいは……オレのことを気にしてくれているのだろうか。
「チッ……お前今の状況分かってんのか?呑気に笑ってんじゃねぇ、よ!」
「あ、ぐっ……ん、んぐっ!」
 兵長の方に顔は向いていないのに何故かニヤついていたのがバレて、不味いと思った瞬間にズブリと後孔に先端が入ってくるのを感じる。
 もしかして、これは兵長の照れ隠しだろうか。
 しかしオレにとっては完全に不意打ちだったのは確かで、そんな妄想は瞬間的に霧散したのは言うまでもない。
 後孔への想像以上の圧迫感に、上着に顔を埋めて呻くようにしながら息を大きく吐き出してギュッと両手を握りしめる。太くて、熱くて……指なんかとはまるで比べ物にならない圧迫感だ。
「しかし凄いな……こんなに入口が開いてやがる。」
「んっ……あ、ぅっ……!」
 実況中継をするように孔の周辺をグルリと指で撫でられて、反射的に入口を窄めるように動かしてしまう。そしてそこを無理矢理割り開くように亀頭が奥に奥に入ってくると、入口から少し入ったところにある前立腺をグッと押し上げられて目の前が瞬間的にスパークして、身体から力が抜け落ちる。
「ひっ、んぐっ!んんん~~~っ!!」
 今まで経験したことが無いような快感だ。
 おかげで上半身を支えていた腕からも力が抜けて、くたりと床に頬を押し付けるような格好になるが腰は兵長の腕に支えられたままなので、腰だけ兵長に突き出している恥ずかしい格好になってしまう。しかし今はそんなことよりも後ろへの強い刺激で一杯一杯だ。
「――っ、く……ちょうど前立腺に当たったか?」
「んっ、んんっ……ぅ、ぐっ!」
 一瞬兵長の動きが止まった後に再び亀頭を引き抜かれ、カリ首の張っているところで前立腺の膨らみをこりこりと重点的に刺激されるのを繰り返されると、その度にそこがじわりと熱くなって腰の辺りに熱が広がる。
 しかしまだそこだけの刺激では完全にイききれなくて、刺激を繰り返されれば繰り返されるほどに焦れったい気持ちが胸の中で広がっていく。
「はっ……ぅ」
(あと少し、なのに……!)
 強く突き上げられたのは最初だけで、あとはずっと中途半端な刺激ばかりだ。
 ハアハアと荒い息を吐いてさっきから身体の中で渦巻いている熱を何とか逃がそうとするが、そんなことでどうにかなるはずもなく。しかし自分から兵長に要求するほどの勇気も無くて、今はただ拷問のような快楽の波に身を任せる事しか自分には出来ない。
「何も言わないと、いつまで経ってもこのままだぞ……エレン?」
「うっ、く!」
 少しだけ強く前立腺を擦り上げられて、呼吸が乱れる。
 ――兵長は、ずるい。
 自分ばっかり余裕そうで、この口振りだと実はオレが限界なのもとっくのとうに気付いていて、それでその様子を見て楽しんでいるのだろう。
 そしてオレがギリギリになったところで、こうやって声を掛けてきたに違いない。それで、オレに恥ずかしい台詞を言わせようとしているのだ。
 オレばかり兵長に振り回されているみたいで面白く無い。だからそんな手に乗るものかと思うが……でも、オレだっていい加減我慢の限界だ。やせ我慢しているだけの余裕なんてとっくのとうに無い。
「……も、っと」
「ん?」
「……だ、だからっ!後ろ……えっと、もっと強く……ほし、い、です。」
 半ばヤケクソで口に出してしまったが、いざ言葉にすると羞恥心がこみ上げてきてだんだんとどもり気味の声になってしまう。
 しかしそれを理由に刺激の手を止められるのも嫌で、顔を後ろに向けて兵長にすがるように目線をやるのが今のオレには精一杯だ。
「まあ……最初だしそんなもんか。今日のところはそれで勘弁してやるよ……っ!」
「ひ、ぐっ――ッ!?」
 兵長の言葉にようやく望んでいた刺激を与えてもらえそうだと気が抜けた瞬間のことだ。まるでその時を狙っていたかのようにガン!と奥まで一気に陰茎を押し込まれて再び目の前に火花が散る。
 快感とか、そういうレベルではない。暴力的なまでの刺激に反射的に身体を逃がそうとするが、腰を掴まれて引き戻されて再び最奥を突き上げられて息が詰まる。
「ははっ。すげぇな、イったのか?」
「ひ、あっ……!んっ!んぐっ!」
 そんなはず無いと思うのに。兵長がオレの陰茎に手を回してそこを何度か擦り上げるように動かすと、グチュリという粘着質な音が下肢から聞こえてくる。
 まさかという思いで額を床にこすり付けるようにして自分の下肢の方に目をやると……大量の精液が零れ落ちて床を汚している。
「この感じだと、奥の方もイイみたいだな、っ」
「ちょっ、まっ……は、うっ!」
 もしかして、オレって前をろくに触られてないのにイっちゃったのだろうかと半ば放心していると、兵長は休むのは許さないというように間髪入れずに奥の方を突き上げてきて意識を無理矢理引き戻される。
 奥の方は指で解されていないせいか、挿入時の比では無いほどの圧迫感があるのだ。だから勘弁して欲しいのだが、兵長はオレの言う事なんでまるで聞く気が無いのだろう。
 オレが静止の声を上げれば上げるほど、嬉々とした様子で最奥を遠慮無い力で抉ってくる。そしてその度にオレの陰茎の先端からはとぷりと白い液体が溢れ出して止まらない。
 もう快感を通り越して苦しいくらいなのに、オレの身体は一体どうしてしまったというのだろう。
「――出す、ぞっ」
「んっ、んんっ!はっ、んん~~ッ!
 ――っ、ぁ?」
 双丘を割り開くようにしながら最奥の壁をゴリゴリと何度も抉られて、過ぎた快感に意識を朦朧とさせていると淫筒に埋められていた陰茎を突然一気に引き抜かれて一瞬呆気に取られる。
 よく分からないがようやく終わったのだろうか。
 しかし気を抜きかけたところで後孔の入口に陰茎を押し当てられ、入口に先端を少しだけ埋め込むようにされるとブチュリと液体の爆ぜるような音が辺りに響き渡る。
 何が起こったのが全く理解出来なくて、オレはただただ戸惑うだけだ。
「ひっ、ぅ!?な、に……っ!?」
「――ッ、……中、出す訳にはいかねぇだろうが。」
「はっ、ぁ……な、か?」
 淫筒の入口に熱い液体がほんの少し入ってきて、ねとりとした何とも言えない初めての感覚に思わず手をやってしまう。
 そしてそれと同時に太ももをドロリとした物が流れ落ちていき、今尻の孔の入口に叩き付けられたモノが兵長の精液だとオレは理解した。
 ……なんというか、とんでもない体験をしてしまった。
 まさかあの薬を誤って飲んだばかりにこんなことになってしまうとは。
 兵長がオレの腰から手を離すと、全身から力が抜けて床にペタリと全身を伏せるような格好になってしまう。そして、オレの意識はそこでプツリと途切れた。

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