アイル

兵長がお見合いをするらしい!-3(R18)

 今日はいつもと違うことが色々とあった。
 一番は文句無しに兵長にふられたことに間違い無い。しかし、今まであんな風に下ネタなんて話せるような関係でもなかったのでそんな話しを出来るくらいには近づけたのだろうかと前向きに考える。
(あとは、兵長とキスしちゃったんだよなぁ……)
 思い切り殴られた顎は今でもジンジンと痛むが、その代償にキスが出来たと思えば安い物だ。
 ――あんなキス、生まれて初めだった。
 自分は唇を合わせるだけのつもりだったのに、まさか兵長の舌まで入ってくるなんて。身体の内部の敏感な粘膜を探られる感覚を思い出すだけで胸がドキドキしてくる。
 ふられたのを思い出すと虚しさを感じるのは事実だが、それでもやっぱり自分は兵長のことが未だに好きで。だからあの時のキスを思い出すとつい下肢が疼いてしまう。
(今日、だけ……)
 もう夜も遅いし、明日だっていつも通り朝から訓練やら仕事の手伝いやらがあるのは分かっているが、こうなってしまったらもう元には戻れない。
 オレは明日の朝の予定を何度か脳内でなぞって羞恥心と罪悪感を誤魔化すと、パジャマ代わりに使っているズボンの腰の隙間から下着の中へと両手をすべりこませた。
 万が一部屋の中に突然誰かが入って来ても取り繕えるように、オレは布団の中にすっぽりと全身を隠して身体を壁側に向けてこそこそと手を動かす。
 扉の方に向けている背中側が何となくスースーとして心もとないが、訓練兵時代に隠れてオナニーをしていた時に比べたらこのくらい全然許容範囲だ。
「……んっ……は、ぅ」
 下着の中に突っ込んだ手で竿全体を扱くように動かすと、直接的な刺激に思わず口から熱い吐息が零れ落ちてしまう。
 感じているときの声は格好悪いから出来れば声は漏らしたくないが、我慢しようと必死に歯を食い縛っても手を動かす度に顎の力が緩んでしまうのでまるで効果が無い。
(そ、いえば……こうやって自分で弄んの久しぶりなんだよな。)
 何だかんだいってここ最近は巨人が侵攻してきたり所属が変わったりとかなりバタついていたので、こうやってちゃんとオナニーをするのが久しぶりなのを今更のように思い出す。
 それなら声が出てしまうのも仕方ないかと自分を納得させると、口の力だけで嬌声を押さえるのを早々に諦め、唇を手の平で覆って強制的に押さえこむ方法に切り替える。
 そして唇を手の平で覆うと先ほどの兵長とのキスを思い出してしまって……何となく人差し指と中指の指先を少しだけ唇の隙間に埋め込んでみると、自身の陰茎がドクリと脈打つのが分かる。
 我ながら、正直な下半身だ。
「ん……っ、ふ、」
 最初は遠慮がちに、しかし慣れと快感が強くなってくると段々と指の動きが激しくなってグチュグチュという粘着質な音が静まりかえった部屋の中に響く。
 いつもなら恥ずかしくて居ても立っても居られないだろうが、今はオナニーをするのが久しぶりというのと兵長にキスをされたという条件が重なりあっているせいか余計に興奮を煽られるだけだ。
「あ、ぅ!」
 自分の指の束を兵長の舌に見立てて自身の舌に絡ませながら表面を擦り、亀頭の敏感な箇所を手の平で覆って圧迫するように刺激すると首の後ろ辺りがジンと痺れて女の人みたいな声が漏れてしまうがそれすらも今は気にならない。
(あと、少し……っ、)
 強く陰茎を刺激したら、あっという間に達してしまうだろう。
 ただせっかくの一人部屋だし、次こうやって出来るのもいつかも分からないので何となくこのまま射精して終わるのが勿体無いと思ってしまって。
 竿を握っていた手をするすると尻の方まで這わせたのはほんの出来心としか言いようが無い。
 オレは九割の好奇心と残り一割の恐怖心にゴクリと喉を鳴らすと、口に入れていた指をゆっくりと引き抜いた。
(……これ、本当に指とか入んのか?ハンジ分隊長の口調だと、何かすんなり入りそうな感じだったけど……)
 指先で尻の孔を軽く擦ってみるが、そこは思った以上に固く閉ざされていて指の一本すらも入りそうな気配はない。それを陰茎まで挿入するなんて……とてもではないが正気の沙汰とは思えない。
(んー……そういえば、香油で滑りを良くするって言ってたっけ。でもそんな物ないしなぁ……あ、でも軟膏はあるな。)
 調査兵団に入団する際に、装備一式と一緒に簡単な治療セットが入った麻袋を渡されていたのを思い出す。
 たかがオナニーなのに随分と大事になってきてるなと思わなくも無いが、凄くイイらしいという話しを思い出してちょっと頑張ろうかなと思ってしまうのは性欲旺盛な年頃だからだろうか。
 自分自身でも何でこんなやる気満々なのかわからないまま、オレは完全にその場のノリでベッドの下に仕舞い込んでいた麻袋を引っ張り出すと、中から軟膏が入っている手の平サイズのブリキ製の小さな容器を手に取った。
 何度かに分けて尻の孔に軟膏を塗りたくると、体温で軟膏が溶けたのか最初よりもヌルついてきたのが分かる。
 そのまま表面を撫でるようにして根気よく指を何度も往復させると、摩擦のせいか入口が膨れてきて指先が引っ掛かりだしたので、それならと息を止めて思い切って指先を少しだけ入れてみると、すんなりと中に入ってしまった。
「ん……っ、ぅ?」
 痛いかもと身を固くして身構えていたが、意外にもそんなものは全くなくて少し拍子抜けだ。
 それならともう少し指を進めてみると、軟膏の滑りの助けのせいもあってか一気に第一関節辺りまで埋まってしまってさすがに焦るが、それでもやはり痛みは無くて。しかしその代わりに自分ではない誰かに身体の中をまさぐられているような奇妙な感覚を覚える。
 それがまるで自分ではない誰かに身体を弄られているみたいだな……
 なんて馬鹿な妄想をするくらいには余裕が出て来たので、オレはさらに調子に乗ると指を奥へとゆっくりと押し進めて第二関節まで指を埋め込んでみた。
(なんか……ヘン、なの。)
 ハンジ分隊長は男でも感じる場所が有ると言っていたが、言われた通り中指の第二関節まで突っ込んでみても感じるのは違和感ばかりで快感が生まれそうな気配は皆無だ。
 ただこの状況に思いの外興奮しているのか先ほどギリギリまで追い込んだ陰茎は未だに勃起したままで、イくにイききれないのが少し辛いというのが唯一の難点だろうか。
「はっ……ぁ、ぅ」
 とりあえず一回イくかと尻の孔に突っ込んだ指はそのままに、空いている方の手で敏感な亀頭を覆って撫でるように刺激すると、そこから熱がじわりと発生して腰がピクリと跳ねる。
 こうしてみると、やっぱり陰茎への刺激が単純で一番だ。
 尻の孔での快感も興味が有るが、こうも面倒ではなぁというのが今現在の正直な感想だろう。
 ただせっかく頑張って指の半ばまで突っ込んだものをすぐに引き抜くのが何となく勿体なくて。亀頭をグニグニと弄りながら指を出し入れして体内の生暖かい奇妙な感触を感じながら、挿入されるのってこんな感じなのかなぁなんて馬鹿なことを考えながら半ば惰性のような快感を楽しんでいたときのことだ。
 後孔のある一点を指先が偶然突き上げた際にむずがゆいような焦れったいような熱がブワリと広がって思わず手を止めてしまう。
「な、んだ?これ……っ」
 最初はまだ恐怖心が多少あったので浅めの位置をゆっくりと指を出し入れしていたが、指を抜き差しするうちについ好奇心で少しずつ奥の方まで指を進めてしまって……今は第二関節よりも少し奥、陰茎の丁度裏側辺りの位置に指先がある。
 そこを指の腹で優しく押し上げるようにすると何かが陰茎から出てしまいそうな感覚に襲われるが、ここがハンジ分隊長が言っていた男でも感じるとかいう場所なのだろうか。
 ちゃんとその感覚を確かめたくて、亀頭を弄っていた手を完全に外すと後孔に集中する。
(そういえば、しこりみたいなのがあるって言ってたっけ……)
 言われてみれば、たしかに違和感を感じる場所にそんな物がある。
「あっ、ぅ……んっ、んぁ、」
 それを指先でこねるようにしてやると、何故か勝手に甲高い声が零れ落ちてしまって恥ずかしいのと同時に酷く興奮する。
 やっぱり、ハンジ分隊長の言っていた場所はここで間違い無い。
 そこを刺激すると、陰茎を弄る時の刹那的な快感とはまた違う後を引く快感が下肢から全身に広がっていく。
 ――でも、指一本だけの刺激ではすぐに物足りなくなってしまうのも時間の問題で。
 しばらくするとオレはイくにイききれないのにだんだんと焦れてしまって、恐る恐るもう一本の指を後孔にそっと添えた。
 幸いにして、どの指も最初に塗りたくった軟膏と後孔まで垂れてきた自身の先走りとでドロドロだ。
 おかげで二本目の指も痛みなどはなくヌルリと後孔に入っていくが、さすがに二本目となると無理矢理に孔を押し広げられているような圧迫感が強い。
「はっ……ん、ぐっ!」
 それを早く何とかしたくて。オレは最初よりはやや性急に指を埋め込むと、感じる場所を二本の指先で押し上げるように刺激して快感以外の感覚を追い払う。
 あとは……
 この場所をもっとグチャグチャになるまで弄りまわしてみたいという欲望のままに、二本の指を内部でゆっくりと押し広げると膨らみを挟み込むようにしながら擦り合わせて――
「――ヒ、ぐっ!」
 最初は加減が分からなくて、つい強めの力で刺激してしまったのだろう。
 途端に電流のような感覚が背筋を走って腰がブルブルと震えると、次の瞬間に陰茎からパタパタと白い液が零れ落ちてしまってびっくりする。
「んっ……んんっ、あ!」
 内壁が蠕動するように勝手に蠢いて、中の指を締め付けていて。
 驚いて中の指を引き抜こうとするが、内壁が窄まっているところを無理矢理に指を動かしてしまったせいで敏感になっている内壁をさらに刺激してしまったらしい。
 再び身体の奥の方から湧き上がる甘い熱にこらえきれずに甘い声が口から次々と零れ落ちてしまう。
(こ、れっ……すご、っ!)
 陰茎の方は精液を放出してしまったらそこで基本的にはオナニーは終了だ。
 しかし後ろのしこりを刺激した時に得られる快感は、たとえイっている最中であっても次から次へと際限無く生まれる物らしい。
 もしかしてオレって物凄い発見しちゃったんじゃ?なんて馬鹿なことを考える程度にはオレの頭の中は快感で一杯だ。
(それなら――……)
 もっとちゃんと動かしてみたらどんなに気持ち良いんだろういう、妄想がチラリと頭の中を掠める。
 そして一度そんなことを思いついてしまったら、指を尻の孔に突っ込んだままの今の状況で試してみない手は……ないだろうと考えるのが普通だろう。
 オレは中の指を少しだけ曲げて感じる場所を狙うようにすると、これから生まれるであろう快感を想像して無意識に熱い息を吐きながらゆっくりとまぶたを閉じた。
 いきなり大きく動かすのは怖いので最初は優しい力でソコをつつくようにしていたが先ほどの強烈な快感を知った後ではやはり少し物足りなくて。
 だからもうちょっとだけ……と心の中で言い訳じみたセリフを恥ずかしさを誤魔化すために呟くと、指を少しだけ抜いてクッと突き上げるようにしてみる。
「……はっ……ん、ぅ!」
 するとソコからジワリと熱が広がって内壁が緩く蠢いて。そんな風にして何度か指の束の出し入れを繰り返すと、後孔まで垂れた自身の先走りやら熱で溶けきった軟膏やらが指の纏わりついているのかグチグチと粘着質な音を立てだして酷く興奮する。
 その証拠に一度射精してから一切触れていないはずの陰茎もいつの間にか固く勃ち上がっていて、そんな事にさえ今は煽られてしまう。
(な、んかオレ……男なのに尻の孔に指突っ込んで感じてるって……っ)
 まるで、女の人みたいだ。
 そして同じ男に尻の孔に挿入される感覚はこんな感じなのだろうかという考えに再び至ると、知らず喉が大げさな程に鳴ってしまって。そしてそんな考えに至ってしまったら、その相手として兵長のことを考えてしまうのは当然だろう。
「はっ、ぁ……へ、いちょ……っ」
 『兵長』と声に出して呼んでしまうと、ヒビが入りながらも何とか守っていた理性の壁がガラガラと音を立てて崩れ落ちていくのが分かる。
 オレは横を向いたままの格好で無意識に片方の足を少し折り曲げて後孔をさらに露出させると、後孔に挿入した指を動かしやすい格好になる。
 そして――後は本能のままに目の前の快感をただただ追いかけるだけだ。
「っ、ひ……あ…ふっ」
(なか、コリコリって……きもちい…よぉ、っ)
 指をギリギリまで引き抜いて中の膨らみを突き上げる動きを繰り返すと、なんだか本当に貫かれているみたいな錯覚に陥る。その相手が誰か、なのは先ほど言った通りだ。
 そして感じれば感じるほどソコはプクリと膨らんできて。今まで感じたことの無い快感に、口が開きっぱなしになって端からトロリと唾液が零れ落ちるがそれを拭うだけの余裕なんて無い。
「んっ!ん、んっ!……す、ごっ…~~~ッッ、あ!!」
 それでも刺激する手の動きを止めずに再び指先で内壁の膨らみを挟み込んでグニグニと指先でこねるようにすると、鋭い刺激が背中を一気に駆け上って。反射的に背中が丸まって爪先がピンと伸びた一瞬後に、自身の陰茎からドプリと精液が勢いよく溢れ出した。
「はっ……ぅ……」
 目の前がチカチカとハレーションを起こして、耳が籠ったようになって何も聞こえない。
「あー……」
 何か、凄かった。
 今の心境を表すならこの一言しか出てこない。
 余りに貧相なボキャブラリーだと自分でも思うが、未だに身体全体が先ほどの快感の熱を引き摺っていて気怠いせいか何も考えられないので勘弁して欲しい。
(いい加減、指抜かないとな……)
 何となく名残惜しくて淫筒の内壁をスリと撫でるようにすると、淫筒が中の指を奥へ奥へと引き込むようにヒクついたので慌てて息を吐いて落ち着くとゆっくりと指を引き抜く。
 まだ慣れていないせいだろうか。加減が分からないので、ちょっとした刺激でも自分が考えているよりも強く感じてしまうこともあるので尻の孔は色んな意味で危険だ。
 クセになりそうな強い快感は少しだけ怖くて、しかし虜になってしまいそうな予感にオレは思わずブルリと震えた。

「う、わ……シーツかえないと流石に不味いな。」
 ようやく少し落ち着いてきたので身体にかけていた布団を剥いで上体を起こすと、ベトリとした下肢のぬめった感触に思わず眉をしかめる。
 最中は夢中になっていたので周りの惨状に全く気が回っていなかったが、終わってみるといつも以上に酷い有様で完全に事故としか思えない。
 蝋燭を灯してベッドの上をちゃんと確認してみると、射精した二回分の精液がシーツの上に零れていて、その他にもヨダレやら先走りやら軟膏の残骸で白いシーツの上のいたるところに染みの跡がある。
「明日……洗濯しないとな。」
 洗濯は各個人でおこなうことになっているのがせめてもの救いだ。
 いつもより少し早く起きて他の人達にバレないように井戸で洗うしかないだろう。
「……はぁ。」
 ただでさえ今日はいつもより寝るのが遅いのに、明日は朝早く起きなければならないとは。
 随分と面倒なことになってしまったが、終わってしまったことをいくらボヤいたところでどうにもならない。
 ……とか何とか言いつつ、次はシーツの上に大きめのタオル敷けば良いかと考えているあたり懲りて無いなとは自分でも思う。
 オレはベッドからゆっくりと立ち上がると、汚れてしまったシーツを引き剥がして洗濯用のカゴに放り込むと新しいシーツを敷き直して再びベッドの中へと潜り込んだ。

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